最近は、在宅ワークでのWeb会議や4K動画のストリーミング、そしてFPSなどのオンラインゲームを快適に楽しむために、Wi-Fi(無線LAN)から、安定性と速度に優れる「有線LAN」へと回帰するユーザーが急増しています。
無線は便利ですが、電子レンジ使用時の電波干渉や、鉄筋コンクリート造のマンションにおける「パケットロス(通信の瞬断)」は、現代のデジタルライフにおいて致命的なストレスになりかねません。
しかし、いざ有線LANを導入しようと決意したとき、誰もが直面する巨大な壁があります。
「この長いLANケーブルを、どうやって部屋の壁に這わせればいいの?」
「賃貸マンションだから、壁に釘やネジはもちろん、画鋲の穴さえ開けたくない」
「床をケーブルが這っていると、ロボット掃除機が巻き込むし、見た目も『スパゲッティ状態』で最悪…」
そんな悩みを抱えて、とりあえず近所のホームセンターへ行こうとしているあなた。その判断は正解です。
しかし、広大な売り場でどの部材をカゴに入れればいいのか、本当にその両面テープで壁紙は剥がれないのか、確信を持って選べる方は意外と少ないものです。
また、「配線カバーなんてどれも同じでしょ? とりあえず100均でいいか」と安易に選んでしまい、数ヶ月後にモールが剥がれ落ちて壁紙ごと破れてしまった、という悲惨な失敗談も後を絶ちません。
この記事では、「ホームセンターで手に入るプロ仕様の部材」と賃貸でも原状回復可能な固定テクニック」を徹底的に解説します。
単なる商品紹介ではなく、なぜその部材が必要なのかという「理屈」から、現場で役立つ細かな施工ノウハウまで、余すことなく網羅しました。
この記事を読み終える頃には、あなたはプロの電気工事士顔負けの知識と自信を持って、ホームセンターの資材売り場を歩けるようになっているはずです。
この記事を読むことで理解できること
- ホームセンター製と100円ショップ製の配線モールの、材質レベルでの決定的な違い
- 賃貸物件でも安心して施工できる、マスキングテープを活用した「壁を傷つけない3層固定術」
- コンクリート壁や屋外配線など、特殊な環境下でケーブルを保護・固定するプロのテクニック
- 仕上がりの美しさを格段にアップさせる、専用コーナーパーツの選定とモールカッター等の工具活用法
本記事の内容
LANケーブルの壁固定はホームセンターで解決
「たかが配線カバーだし、安いもので十分では?」
そう思われる気持ちもよく分かります。しかし、配線モールは一度設置すると、数年、場合によっては10年以上も壁に張り付いている、いわば「住宅インフラ」の一部になります。
ここでは、なぜホームセンターで売られているメーカー製部材を選ぶべきなのか、その理由を科学的な視点も含めて深掘りしつつ、賃貸ユーザーの命題である「壁の保護」について解説していきます。

100均とホームセンターのモール比較
LANケーブルを隠して壁に固定するための「配線モール(モールダクト、ケーブルカバー)」。
ダイソー、セリア、キャンドゥなどの100円ショップでも、電化製品コーナーに行けば必ずと言っていいほど置いてあります。
一方、カインズ、コーナン、DCM、ロイヤルホームセンターなどの資材売り場には、マサル工業や未来工業といった専門メーカーの製品がずらりと並んでいます。
価格差は数倍ありますが、この差は一体どこから来るのでしょうか。
実は、見た目は似ていても、その「材質」と「設計思想」には、プロが見れば一目瞭然の決定的な違いが存在します。
1. 材質科学:PVC・ABS対、軟質樹脂の戦い
ホームセンターで販売されている主要メーカー(マサル工業「ニュー・エフモール」など)のモールは、主に硬質塩化ビニル(PVC)やABS樹脂を採用しています。
これらは本来、建築資材として設計されており、以下の特性を持っています。
- 耐衝撃性:
掃除機のヘッドがガンガン当たっても割れにくい十分な強度があります。 - 耐候性・耐変色性:
紫外線吸収剤などが配合されており、窓際で使用してもプラスチック特有の「黄ばみ」や「白化」が起きにくい設計です。 - 難燃性:
万が一の電気火災の際、炎が燃え広がるのを防ぐ自己消火性を持っています(UL規格などを満たすものが多い)。
対して、100円ショップの製品の多くは、コストダウンのために厚みを極限まで薄くし、材料費の安い軟質な樹脂を使用しているケースが見受けられます。
導入当初は柔らかくてハサミでカットしやすいというメリットがありますが、経年劣化が早く進みます。
特に窓際などで紫外線を受けると、わずか1〜2年でプラスチックが硬化してボロボロになり、配線を直そうとちょっと触っただけで「バキッ」と粉砕してしまうことも珍しくありません。
2. 「嵌合(かんごう)」精度の違い
モールは「ベース(底)」と「カバー(蓋)」の2部品で構成されていますが、この2つが噛み合う部分を「嵌合」と呼びます。
LANケーブル、特に通信速度が速いCAT6A(カテゴリー6A)などの高性能ケーブルは、内部に十字介在(仕切り)が入っており、太くて硬く、反発力が強いのが特徴です。
ホームセンター製のモールは、この嵌合精度が非常に高く設計されており、「パチン!」という音とともに強固にロックされます。
ケーブルが内部で暴れても、その反発力で蓋が弾け飛ぶことはまずありません。
一方で安価な製品は、この噛み合わせが浅かったり緩かったりすることがあります。
施工直後は良くても、夏場の気温上昇でプラスチックが膨張した際などに、ケーブルの反発力に負けて蓋が「ポロッ」と外れてしまう現象が多発します。
夜中に突然、天井付近のモールが弾け飛ぶ音で目を覚ます…なんてことは、精神衛生上避けたいものです。
3. サイズ展開と美観の差
ホームセンターの最大の強みは、その圧倒的なラインナップです。
100円ショップのモールは、物流コストや陳列スペースを抑えるために「長さ50cm」程度にカットされて販売されています。
もし床から天井まで(約2.4m)配線しようとすれば、最低でも5本を継ぎ接ぎすることになります。どんなに丁寧に施工しても、5箇所の継ぎ目のラインは目立ち、見栄えが悪くなります。
ホームセンターでは、標準で1m、店舗によっては2mの長尺物が販売されています。
これを使えば、一般的な天井高の部屋であれば、継ぎ目をほとんど作らずに一本線でスマートに処理できます。この「継ぎ目のなさ」こそが、DIY感を消し、部屋のインテリアに溶け込ませる最大のコツなのです。
また、収納力(号数)のバリエーションも豊富です。
| サイズ (号数) | 内寸 (幅×高さ目安) | 収納できる ケーブルの目安 | 用途 |
|---|---|---|---|
| 0号 | 約10mm × 5mm | 極細LANケーブル1本、 電話線 | 目立たせたくない箇所の単線配線 |
| 1号 | 約12mm × 8mm | UTPケーブル(CAT6)1本 | 一般家庭での標準的なLAN配線 |
| 2号 | 約17mm × 10mm | UTPケーブル2〜3本 | 複数の機器をまとめる幹線ルート |
| 3号 | 約22mm × 12mm | UTPケーブル4本以上、 電源線混在 | PCデスク裏などの集中配線 |
(出典:マサル工業株式会社「ニュー・エフモール」製品規格より参照)

このように、用途に合わせて最適なサイズを選べるのもホームセンターならではの利点です。
結論として、デスクの裏や家具の隙間など「見えない場所の整理」なら100均でも十分ですが、リビングの壁や廊下など「目立つ場所・長く使う場所」なら迷わずホームセンターを選ぶべきです。
賃貸で壁を傷つけない配線の固定方法
持ち家であれば、壁にビスを打とうが強力な接着剤を使おうが自由ですが、日本の住宅事情では多くの方が賃貸物件にお住まいでしょう。
賃貸契約における「原状回復義務」は、DIYを行う上で常に意識しなければならない絶対的なルールです。
一般的に、画鋲程度の小さな穴は「通常損耗」として認められるケースが多いですが、両面テープによる「壁紙の剥がれ」や「糊残り」は、入居者の過失(善管注意義務違反)とみなされ、退去時に壁紙の張り替え費用を請求されるリスクが高い項目です。
特に、モールを固定するためにはそれなりの粘着力が必要ですが、強力なテープをクロス(壁紙)に直接貼ると、剥がす際にクロスの表面層まで一緒に持っていかれてしまいます。
そこで登場するのが、もはや現代DIYの常識とも言える「マスキングテープ下地工法」です。
この技術を使えば、「強固な固定」と「きれいな剥離」という、相反する要素を両立させることが可能になります。

マステ下地工法のメカニズム:3層構造の役割分担
この工法は、壁に対して以下の「3層構造」を作ることで機能します。
- 第1層:マスキングテープ(対 壁面)
壁紙に直接触れる層です。粘着力は「弱〜中」程度に調整されており、長期間貼り付けても壁紙を傷めず、糊が残りにくい特性を持っています。
この層が「保護フィルム」の役割を果たします。 - 第2層:強力両面テープ(結合層)
マスキングテープの背面に貼り付ける層です。
ここでは一切の遠慮はいりません。モールをガッチリと掴んで離さない、最強クラスの粘着力を持つテープを使用します。 - 第3層:配線モール(固定物)
LANケーブルを収納する本体です。
この構造の賢いところは、「重力や衝撃は強力テープで支えつつ、壁への最終的な負担はマスキングテープの広い面積で分散して受け止める」点にあります。
そして剥がすときは、一番弱い「壁とマステの間」からペラリと剥がれるため、壁紙にはダメージが残らないというわけです。
マスキングテープを使う下地工法
理論が分かったところで、具体的な施工プロセスを見ていきましょう。
「ただマステを貼ればいい」わけではありません。失敗しないためには、いくつかの重要なポイントがあります。
Step 1: 壁面の「脱脂」と「清掃」
多くの人が軽視しがちですが、これが最も重要な工程です。
壁紙の表面には、普段の生活で舞い上がったホコリ、料理の油煙、手垢などがうっすらと付着しています。
これらが残った状態でテープを貼ると、テープが本来の粘着力を発揮できず、数日〜数週間でモールごとはがれ落ちてしまいます。
施工するルートに沿って、以下の手順で徹底的に掃除してください。
- 固く絞った濡れ雑巾、または薄めた中性洗剤を含ませた布で拭く。
- 無水エタノール(アルコール)を含ませた布で仕上げ拭きをし、油分を除去する。
- 完全に乾燥させる(水分が残っているとテープが付きません)。
Step 2: 最適なマスキングテープの選定
「マステなら何でもいい」は大間違いです。
100円ショップの文具用マステは、デザイン重視で粘着力が弱すぎたり、逆に糊の質が悪くて数年後にベベタベタになったりするものがあります。
壁固定の下地として使うなら、信頼できるブランドの製品一択です。
私が絶対の信頼を置いているのが、カモ井加工紙株式会社の「mt」シリーズ、特に「mt CASA(インテリア用)」や、ホームセンターの塗装用品売り場にある「建築塗装用(ルパンなど)」です。
これらは壁紙の凹凸に対する追従性が高く、かつ剥がす際の糊残りが極限まで抑えられています。
ホームセンターの塗料売り場やテープ売り場で入手可能です。
幅選びのコツ
マスキングテープは、貼り付けるモールの幅よりも「少し広いもの」を選んでください。
例えば、幅22mmのモールを使うなら、幅24mm〜30mmのマステを使います。
幅広のマステを使うことで、壁との接着面積が増えて保持力がアップするほか、施工時に「ここが貼るラインだ」というガイドラインとしても機能します。
Step 3: 圧着のテクニック
テープを貼る際は、指の腹を使ってギュッ、ギュッと押し込むように「圧着」してください。
壁紙の表面はエンボス加工(デコボコ)になっています。ただ乗せただけでは凸部分にしかテープが触れておらず、接触面積が足りません。
押し込んで凹部分にもテープを食いつかせることで、本来の保持力を引き出すことができます。

強力ではがせる両面テープの選び方
下地の準備ができたら、次はその上に貼る両面テープの選定です。
多くのモールには最初から裏面に両面テープが貼られている「テープ付き」タイプがありますが、私はあえて「テープなし」のモールを買い、自分で信頼できるテープを貼ることをお勧めすることもあります。
付属のテープの質が不明な場合や、より強力に固定したい場合があるからです。
推奨ブランド:3Mとニトムズ
ホームセンターのテープ売り場に行くと、膨大な種類の両面テープがありますが、迷ったら以下の2大メーカーから選べば間違いありません。
- 3M(スリーエム):コマンドタブ、スコッチ超強力両面テープ
化学メーカーの巨人、3Mの技術力は圧倒的です。
特に「コマンドタブ」シリーズのような「引き伸ばして剥がす」タイプは、マステ下地工法を使わない場合でも直接壁に貼れる(条件あり)製品として人気ですが、マステ工法の第2層として使う際もその強力な保持力は頼りになります。
- ニトムズ:はがせる強力両面テープ
「コロコロ」で有名なニトムズも、粘着技術のスペシャリストです。
「強接着」なのに「糊残りしにくい」というバランスの良い製品が多く、DIYユーザーから高い支持を得ています。
壁紙の状況に合わせた「粗面用」の活用
もし、お部屋の壁紙が大きくデコボコしたデザイン(塗り壁調など)の場合、通常の両面テープでは接着面積が稼げず、すぐに剥がれてしまうことがあります。
その場合は、テープのスポンジ層が分厚く柔らかい「粗面用(そめんよう)」を選んでください。
厚手のスポンジが壁の凹凸を吸収し、しっかりと食いついてくれます。
きれいに仕上がるコーナーパーツ活用
DIY初心者が最も苦戦し、仕上がりに差が出るのが「角(コーナー)」の処理です。
部屋の隅、天井と壁の境目、ドア枠の迂回など、配線ルートには必ず「曲がり角」が存在します。
ここで、「モールを斜め45度にカットして、額縁のように綺麗に合わせる」という職人技(留め切り)に挑戦する方もいますが、ハッキリ言っておすすめしません。
専用の切断ガイドを使っても、0.5mmズレるだけで黒い隙間ができ、非常に見栄えが悪くなるからです。
ホームセンターには、そんな苦労を一瞬で解決してくれる魔法のアイテム「コーナーパーツ(付属品)」が売られています。
| パーツ名称 | 形状 | 使用するシチュエーション |
|---|---|---|
| マガリ (曲がり) | 平面L字 | 壁面を「横→縦」あるいは「縦→横」へ90度方向転換する際に使用します。 最も使用頻度の高いパーツです。 |
| イリズミ (入隅) | 内角L字 | 部屋の四隅など、壁が内側に凹んでいる角に沿って 曲がる箇所に使用します。 |
| デズミ (出隅) | 外角L字 | 柱や梁など、壁が出っ張っている角を回り込む際に使用します。 ここは人がぶつかりやすく剥がれやすい場所なので、 パーツによる保護が必須です。 |
| エンド (端末) | キャップ | 配線の終端部分です。モールの切り口を隠し、 ケーブルの引き出し口を保護します。 これがあるだけで「切りっぱなし感」が消えます。 |
| チーズ (ティー) | T字型 | 一本の配線ルートから上下に分岐させる場合などに使用します。 |

これらのパーツの使い方は非常にシンプルです。
モールをコーナーの手前で垂直に切断し、パーツを上から「パチン」と被せるだけ。
これだけで、切断面のバリや多少の長さ不足、隙間などが全て隠蔽され、まるでレゴブロックを組んだかのような美しい一体感が生まれます。
パーツは1個数十円〜百円程度です。
「数百円をケチって苦労して汚い仕上がりになる」より、「数百円払って楽をしてプロ級の仕上がりを手に入れる」ほうが、絶対にコストパフォーマンスは高いはずです。
モール本体を買う際は、必要なコーナーパーツの数を事前にカウントし、少し多めに買っておくことを強くお勧めします。
ホームセンターのLANケーブル壁固定実践術
必要な知識と部材の選び方は理解できたと思います。
ここからは、いよいよ実践編です。
実際に工具を手に取り、施工を行う際の具体的な手順と、コンクリート壁や屋外といった「難所」を攻略するためのプロ直伝のテクニック、そして作業効率を劇的に上げる工具について解説します。

失敗しないモール施工の手順とコツ
「よし、貼るぞ!」と意気込む前に、まずは落ち着いて計画を立てましょう。
配線工事の8割は「段取り」で決まります。
Step 1: 配線ルートの設計と「ノイズ対策」
LANケーブルを通すルートを壁に書き出すか、イメージします。
ここで注意すべきは、「電源ケーブル(AC100V)」との距離です。
電気工事の規定(内線規程)でも推奨されていますが、通信線(LAN)と強電線(コンセントのコードなど)が長時間並走すると、電磁誘導によるノイズが発生し、通信速度の低下やパケットロスを引き起こす原因になります。
家庭内レベルではそこまで神経質になる必要はありませんが、可能な限り電源コードとは30cm以上離して配線するか、どうしても交差する場合は直角にクロスさせるようにルートを設計するのが鉄則です。
Step 2: ケーブルの「曲げ半径」を確保する
LANケーブルの内部には、4対8芯の非常に細い銅線が「寄り合わせ(ツイスト)」状態で入っています。
これを直角にパキッと折るように曲げてしまうと、内部の銅線にストレスがかかって断線したり、寄り合わせのバランスが崩れてノイズ耐性が落ちたりします。
許容曲げ半径を守ろう
LANケーブルには「許容曲げ半径」というスペックがあります。一般的にはケーブル直径の4倍以上(約25mm〜30mm)の半径を持たせて、ふんわりと曲げる必要があります。
コーナー部分では、モールの中にケーブルをギチギチに詰めるのではなく、少しゆとりを持たせてカーブを描けるように配置してください。
Step 3: ベースの貼り付けとケーブル収容
前述のマステ工法で、モールの「ベース(底)」部分を壁に固定していきます。
このとき、天井付近などの高所作業では、脚立の乗り降りが頻繁発生して危険です。
安全のため、モールは床で必要な長さにすべてカットし、裏面にテープを貼る準備まで完了させてから、一気に壁に貼り付ける作業に移ると効率が良いです。

ベースが貼れたらケーブルをはめ込み、最後にカバー(蓋)を閉めます。
蓋は端から順番に、親指で「パチン、パチン」と音がするまで確実に押し込んでください。
特に長尺のモールの場合、真ん中あたりが浮いていることがあるので、念入りに確認しましょう。
コンクリート壁への固定テクニック
マンションの界壁(隣家との間の壁)やベランダなど、下地が石膏ボードではなく「コンクリート直(じか)」の場合があります。
ここは画鋲も釘も通らず、表面がザラザラしているため、通常の両面テープも効きにくい「DIYの難所」です。
しかし、諦める必要はありません。化学の力が解決してくれます。

1. ホットメルト(熱溶解)フックの活用
コンクリートブロックやモルタル壁に最適なのが、「ホットメルトフック」です。
フックの裏面に固形の接着剤が付いており、これをライターやガスの炎でドロドロに溶かしてから壁に押し付けます。
冷えて固まる際、液状化した樹脂がコンクリートの微細な穴や凹凸に食い込む「アンカー効果」を発揮し、驚くほど強固に固定されます。
屋外のブロック塀などに配線を這わせる際にも重宝します。
2. 弾性接着剤「セメダインBBX」等の裏技
「コンクリートにテープは貼れないけど、ガチガチに接着してしまうと後で剥がせなくて困る…」
そんなワガママな要望に応えるのが、「貼ってはがせる弾性接着剤」です。代表的なのが「セメダインBBX」です。
この接着剤は、硬化してもカチカチにならず、粘着質のゴムのような状態を保ちます。
フックやモールの裏に塗布して数分乾かし、粘着性が出てから壁に貼り付けます。
衝撃に強く、凹凸にも追従し、不要になったらゴムのように引き剥がすことができます。
「賃貸のコンクリート壁」という最難関ミッションにおける、強力な武器となるでしょう。
屋外配線に必要なPF管と防水処理
「母屋から離れのガレージまでLANを引きたい」「2階の部屋へ外壁伝いに配線したい」といったケースもあるでしょう。
ここで最大の敵となるのが、雨ではなく「太陽光(紫外線)」です。
屋内で使用される一般的なLANケーブル(薄い青や白のもの)の被覆はPVC(ポリ塩化ビニル)ですが、これは紫外線に非常に弱いです。
直射日光に晒されると、プラスチック中の可塑剤が抜けて硬化し、早ければ1〜2年でひび割れ(クラック)が発生します。
そこから雨水が侵入し、毛細管現象でケーブル内部を伝って、最悪の場合、接続しているルーターやPCのLANポートまで水が到達してショートさせる恐れすらあります。
プロの流儀:PF管と高耐候ケーブル
屋外配線を成功させるための鉄則は以下の2点です。
- 屋外用LANケーブル(Outdoor Cable)を使う:
被覆にカーボンブラックを含有したポリエチレン(PE)を使用している「黒色」のケーブルを選んでください。
紫外線に対して圧倒的な耐性があり、屋外暴露でも10年以上の耐久性を持ちます。 - PF管(合成樹脂可とう電線管)で防護する:
ケーブルを物理的に守るために、ホームセンターの電材売り場にある「PF管(ピーエフかん)」というジャバラホースの中に通します。
これにより、紫外線、風雨、そしてネズミやカラスによる咬害(こうがい)を完全にシャットアウトできます。
PF管は「サドル」というU字金具を外壁にビス止めして固定しますが、ビスが打てない場合は、屋外用の強力両面テープや接着剤を併用して固定します。

雨水の侵入を防ぐ「ドリップループ」
ケーブルを屋外から屋内へ引き込む際、絶対にやってはいけないのが「穴に向かってケーブルが下り坂になるように配線すること」です。これでは雨水がケーブルを伝って穴に流れ込んでしまいます。
必ず、穴に入る直前でケーブルを一度U字型にたるませる「ドリップループ(水切り)」を作ってください。
これにより、伝ってきた雨水はU字の底の部分で地面に滴り落ち、穴への浸水を物理的に防ぐことができます。
また、エアコンのダクト穴などを利用する場合は、隙間を「エアコンパテ(配管用パテ)」で隙間なく埋めることも忘れずに。
モールカッターなど便利な工具の紹介
最後に、作業効率を左右する「工具」についてお話しします。
モールはプラスチックなので、100円ショップのノコギリや大きめのカッターナイフ、剪定バサミなどでも切れないことはありません。
しかし、数本切るだけならまだしも、家中の配線をやるとなると、その労力は大変なものです。
切断面がギザギザになったり、力を入れすぎてモールが割れてしまったり、最悪の場合は指を怪我するリスクもあります。
投資価値アリ!「モールカッター」の威力
もし、あなたが今後もDIYを続けるつもりなら、3,000円〜5,000円程度で販売されている「モールカッター(ラチェット式)」の導入を強く強くおすすめします。
この工具の凄さは、以下の点にあります。
- ラチェット機構:
テコの原理を応用し、カチカチと握り込むだけで、女性の力でも驚くほど軽く切断できます。 - 美しい切断面:
ハサミで切ったときのように切り口が潰れず、スパッと垂直に切れるため、バリ取りの手間がほとんど要りません。 - 直角・45度ガイド:
製品によってはガイドが付いており、正確な角度切りが可能です。
「たった1回のために買うのは…」と躊躇する価格ですが、作業時間の短縮と仕上がりの美しさ、そして安全性を買えると思えば、決して高い買い物ではありません。
もし予算を抑えたい場合は、プラスチック切断用の目の細かいノコギリ「ピラニア鋸」と、直角に切るためのガイドボックス「マイターボックス」のセット(合計2,000円程度)でも、十分にきれいな仕事ができます。
【まとめ】ホームセンターでLANケーブル壁固定を完遂
ここまで、「LANケーブルの壁固定」について説明してきました。
たかが配線、されど配線。
適切な部材と正しい知識を持って施工すれば、それは単なる「ケーブル隠し」を超えて、お部屋の快適性と安全性を高める立派な「リフォーム」になります。
100円ショップの手軽さも魅力的ですが、長く住む大切な家だからこそ、ホームセンターのプロ仕様部材と、壁を守るマステ下地工法を選んでいただきたい。
それが、失敗しないDIYへの最短ルートであり、将来の自分への投資でもあります。
配線がスッキリ片付いた部屋で楽しむ超高速インターネットは、あなたのデジタルライフを間違いなくワンランク上のものにしてくれるはずです。
※本記事で紹介した施工方法は一例です。壁紙の種類や環境によっては十分な強度が得られない場合や、逆に強力すぎて跡が残る可能性があります。施工の際は必ず目立たない場所でテストを行うなど、ご自身の責任において実施してください。