家族旅行の楽しい帰り道、夜の高速道路を走っていて突然「バタン!ゴトゴト!」という異音と共にハンドルを取られたらどうしますか?しかもそれが、激しい雨の降る深夜だったとしたら……。想像するだけで背筋が凍るような光景ですが、これは誰にでも起こりうる現実です。
トヨタの70系ヴォクシーは、広大な室内空間と使い勝手の良さで、ファミリー層から絶大な支持を得ている名車です。しかし、この車には、いざという時にオーナーをパニックに陥れる「ある構造上の特徴」があります。
それは、「車載ジャッキの収納場所が、極めて見つけにくい場所に隠蔽されている」という点です。
実は、70系ヴォクシーのジャッキは、静粛性を高めるため、そして荷室を少しでも広くするために、一見しただけでは絶対に気づかないような壁の中に埋め込まれています。取扱説明書を見れば書いてあることですが、緊急事態の真っ只中に、分厚いマニュアルを引っ張り出して該当ページを探す余裕なんて、なかなかありませんよね。

そこでこの記事では、70系ヴォクシーのジャッキ収納場所の特定から、独特な取り出し方のコツ、そして特殊なスペアタイヤの降ろし方まで、徹底解説します。
これを読めば、万が一のトラブルに直面しても、落ち着いて家族を守るための行動が取れるようになることでしょう。
- 70系ヴォクシー特有の「完全に隠された」ジャッキ収納場所と、その安全な開き方
- ジャッキを取り出すために必要な「固定解除」の具体的な手順とコツ
- 車外の床下に吊り下げられたスペアタイヤを、車内から降ろすための特殊な操作方法
- 車体を損傷させないための、正しいジャッキアップポイントと安全管理の知識
まずは、多くのオーナーさんが最初にして最大の壁となる「ジャッキの居場所」と、それを「どうやって取り出すのか」という基本から、詳細に紐解いていきましょう。
本記事の内容
70系ヴォクシーのジャッキ収納場所と見つけ方
ミニバンというパッケージングの制約上、70系ヴォクシーの車載工具は、パズルのように巧妙に配置されています。「探したけれど見つからない」「前のオーナーが紛失したのかもしれない」と不安に思っている方も多いでしょう。しかし、ほとんどの場合、それは「無い」のではなく「見えていない」だけなのです。
ジャッキが収納されている位置
結論から申し上げますと、ジャッキが収納されている正確な位置は、「ラゲッジスペース(荷室)左側の壁面内部」です。床下収納(サブトランク)の中ではありません。

工具とジャッキの取り出し方
工具の場所は、7,8人乗り車と5人乗り車は同じ場所にありますが、カバーが違います。
取り出し方
- 安全な場所に停車する
まず、車両を固く平らな安全な場所に停車させ、パーキングブレーキをかけ、シフトレバーを「P」に入れます。 - ラゲージルームを開ける
荷室のデッキボード(床板)を持ち上げます。 - カバーや固定具を外す
スペアタイヤの上にあるカバーや、ジャッキや工具類が収納されているトレイの蓋を外します。 - ジャッキを取り出す
ジャッキは、車体に固定するために少し締め付けられた状態で格納されています。
ジャッキ本体の一部(ダイヤル状の部分)を手で「ゆるむ」方向に回して固定を解除し、取り出します。
ツールバッグに入っているジャッキハンドルやレンチも同時に取り出します。


ジャッキの出し方と固定解除の手順
カバーを取り外すと、薄暗い空洞の中に、黒い金属の塊であるパンタグラフジャッキが、まるで壁に埋め込まれるように収納されているのが見えます。しかし、ここでも焦ってはいけません。このジャッキは、ただ置かれているわけではなく、車体の一部として強固に固定されています。
そのまま力任せに引っ張っても、車体が揺れるだけでびくともしません。「取り出し方がわからない」と救援を呼ぶケースも実際にあるほど、初見殺しの構造なのです。
「回して縮める」が正解!固定解除のメカニズム
車載ジャッキは、自身の「伸びようとする力」を利用して、収納スペースの壁と壁の間に突っ張る形で固定されています。つまり、取り出すためにはジャッキを「縮める」必要があるのです。
70系ヴォクシーの場合、ジャッキの中央を貫通しているネジシャフトの端に、手で回せるようなプラスチック製のノブ、あるいはL字型の金具が付いています。
取り出しの3ステップ
- ロックの位置を確認:
ジャッキの側面にある固定ノブ(またはボルト部分)を目視で確認します。 - 反時計回りに回す:
ノブを「左回り(反時計回り)」に回します。これにより、ジャッキの足が徐々に閉じ、突っ張る力が弱まります。 - 引き抜く:
十分に緩み、手で揺らしてガタつくようになったら、収納スペースから手前にスライドさせて取り出します。
【注意】固着して回らない時の対処法
長期間(数年〜10年以上)一度もジャッキを使用していない場合、ネジ山が錆び付いたり、振動で食い込んだりして、手では回らないことがあります。その場合は、無理をして手首を痛める前に、以下の方法を試してください。
- 工具を使う:
ウォーターポンププライヤーや、車載工具のホイールナットレンチの隙間を利用して、ノブを掴んで回します。 - 潤滑剤を使う:
「KURE 5-56」などの潤滑スプレーをネジ部分に少量吹き付け、数分待ってから回すとスムーズに動きます。
必要な車載工具の場所と確認方法
ジャッキ本体を確保しても、それ単体では何の役にも立ちません。ジャッキを上げ下げするためのハンドルや、タイヤのナットを回すレンチが必要です。これらも、ジャッキと同じ場所にあります。
いざという時に「あれ?一本足りない!」とならないよう、以下のリストを参考に中身を点検してください。
| 工具名 | 役割と特徴 |
|---|---|
| ジャッキハンドル (クランク棒) | ジャッキの回転部分に引っ掛けて回すための鉄の棒です。 収納時は2本〜3本のパーツに分割されており、 使用時に知恵の輪のように連結して一本の長い棒にします。 |
| ホイールナットレンチ (L字レンチ) | タイヤを固定しているナットを緩めたり締めたりするための L字型の工具です。 また、ジャッキハンドルの端に差し込んで、 「持ち手」としての役割も果たします。 |
| ジャッキハンドルバー (延長バー) | 単なる延長棒ですが、70系ヴォクシーにおいては 「スペアタイヤを降ろす」という極めて重要な役割を持っています。 これがないと、タイヤ交換作業がスタートラインで詰みます。 |
| 牽引フック (アイボルト) | 車両が故障して動けなくなった際、 レッカー車に引っ張ってもらうためのボルトです。 バンパーにある小さなカバーを外し、 そこにねじ込んで使用します。 |
中古車でジャッキが入ってない時の対応
中古車市場で流通している70系ヴォクシーの中には、残念ながらこれらの工具が「欠品」している個体が意外と多く存在します。
- 「前のオーナーがDIYで作業し、戻し忘れた」
- 「少しでも燃費を良くするために、重量物を降ろしてしまった」
- 「工具袋だけ別の場所に保管し、そのまま売却してしまった」
理由は様々ですが、もし確認して収納スペースが空っぽだった場合、それは貴方にとって重大なリスクです。
どこで買えばいい?適切な入手方法
ホームセンターで売っている汎用の油圧ジャッキを買うのも一つの手ですが、車載用としては推奨できません。大きすぎて収納場所に収まらないからです。最も確実で安全なのは、「純正同等品」を入手することです。
- トヨタディーラーで注文する:
車検証を見せて「車載ジャッキと工具一式が欲しい」と伝えれば、確実に適合する新品を取り寄せてくれます。価格は工具込みで数千円〜1万円程度です。 - ネットオークションや解体パーツ店を利用する:
「70 ヴォクシー ジャッキ 純正」などで検索すると、中古品が安価(2,000円〜3,000円程度)で見つかります。70系ノアのものも共通で使えます。
【重要】他車種のジャッキ流用は危険
「軽自動車のジャッキが余っているから」といって、それをヴォクシーに使うのは絶対にやめてください。軽自動車用のジャッキは耐荷重が低く(600kg〜800kg程度)、重量級ミニバンであるヴォクシー(車両重量1.6トン前後)を持ち上げると、ジャッキがひしゃげて潰れる危険性が非常に高いです。
パンク修理キット搭載車の見分け方
どれだけ探してもジャッキが見つからず、中古車店に問い合わせても「入っているはず」と言われない場合……。その車は、もしかすると「スペアタイヤレス仕様(パンク修理キット搭載車)」かもしれません。
70系ヴォクシーの販売期間中(特にモデル末期や「G's」などの特別仕様車)には、スペアタイヤを廃止し、パンク修理キットを標準装備とする流れが生まれ始めていました。また、新車購入時のメーカーオプションで「スペアタイヤ無し」を選択している場合もあります。
この仕様の場合、ジャッキ収納スペース、あるいはラゲッジルーム床下のサブトランク内に、以下のセットが鎮座しています。
パンク修理キットの構成品
- 電動エアコンプレッサー:
黒くて四角い箱型の機械。シガーソケットから電源を取り、タイヤに空気を送るポンプです。 - パンク修理剤(シーラント):
白い液体の入ったボトル。
これをタイヤ内に注入し、空気圧で内側から穴を塞ぐ仕組みです。

修理キット搭載車の場合、タイヤを外して交換するという作業自体が発生しないため、そもそも車載ジャッキやレンチは搭載されていません。
ご自身の愛車が「タイヤ交換タイプ」なのか「修理キットタイプ」なのか。これを知らないままパンク現場に直面すると、対応手順が全く異なるため大パニックになります。必ず一度、トランクを開けて確認しておいてください。
道具の準備と確認が完璧にできたら、次は実践編です。ここからは、いざという時にあなた自身と家族の命を守るための「正しい作業手順」を、プロの視点で詳しく解説します。
70系ヴォクシーのジャッキ収納場所と使用手順
「ジャッキなんて教習所で一度触ったきりだ」という方も多いはずです。しかし、70系ヴォクシーのようなミニバンは、教習車(セダン)とは構造が大きく異なります。特にスペアタイヤの場所は特殊で、取り出し方を知らなければ絶対に交換できません。
ここでは、現場でスマホを見ながらでも確実に作業できるよう、ステップバイステップで解説します。
スペアタイヤの下ろし方と専用工具
多くのセダンやコンパクトカーは、トランクの床板をめくると、そこにスペアタイヤがどんと鎮座しています。しかし、70系ヴォクシーのラゲッジ床下にあるのは収納スペースだけです。
ではタイヤはどこにあるのか?答えは、「車外の床下(運転席のーの真下)」です。雨の日や泥道では、外に出て車の下を覗き込むのは大変な作業ですが、実はタイヤを降ろす操作自体は、車内からスマートに行えるよう設計されています。
魔法のような「吊り下げ機構」の操作手順

【重要】JAFの出動理由を知っていますか?
JAF(日本自動車連盟)が公表しているロードサービスの統計によると、タイヤのパンクやバーストによる救援要請は、高速道路では第1位、一般道でも第2位という高い頻度で発生しています。「自分は大丈夫」と思っていても、釘一本踏めば誰でも当事者になります。そして、いざスペアタイヤを使おうとしたら「空気が抜けていて使い物にならなかった」という悲劇も後を絶ちません。スペアタイヤは自然に空気が抜けるため、車検や点検のタイミングで必ず空気圧チェック(4.2kg/cm²と高めに設定されています)を依頼しましょう。
(出典:JAF『よくあるロードサービス出動理由』)
70系のジャッキアップポイントの位置
ジャッキを掛ける場所(ジャッキアップポイント)は、車の重量1.6トンを一点で支えるために、鉄板が幾重にも重ねられて補強された「最強の場所」です。ここ以外にジャッキを掛けることは、自殺行為に等しいと言っても過言ではありません。
70系ヴォクシーのジャッキポイントは、左右のサイドシル(ドアの下の敷居部分)の下側に設定されています。
間違えやすいポイントを徹底図解
1. フロント(前輪)側のポイント
前輪のタイヤハウスから少し後ろ側、運転席(または助手席)のドアヒンジの真下あたりを覗き込んでください。サイドシルの下端に、鉄板が縦に2枚合わさって溶接されている「耳(フランジ)」があります。
その耳の部分を指でなぞると、「2つの切り欠き(凹み)」あるいは「2つのポッチ(突起)」があるのがわかります。この「2つの目印の間」が、ジャッキの頭を掛けるべき正解の場所です。
2. リア(後輪)側のポイント
スライドドアの後ろ寄り、後輪タイヤハウスのすぐ前あたりを覗き込みます。同様にサイドシルの耳に目印がありますので、そこを狙います。

【絶対禁止】ここに掛けてはいけません!
- サイドステップ(エアロパーツ):
純正エアロ装着車(煌など)の場合、サイドシルの外側をプラスチックのカバーが覆っています。
ここにジャッキを当てると、バキバキに割れます。必ず奥にある鉄板(ジャッキポイント)を確認してください。 - エンジンオイルパン:
エンジン下にある黒い皿のような部品。ここに掛けると凹んでオイル漏れを起こし、エンジンが壊れます。 - サスペンションアーム:
曲がってしまい、走行不能になります。
安全なスペアタイヤの交換方法
ジャッキとタイヤの準備ができたら、いよいよ交換作業です。ここでは、プロの整備士も守っている「安全の鉄則」に則った手順を紹介します。一つ飛ばすだけでリスクが跳ね上がりますので、必ず順番通りに行ってください。
Step 1:安全確保と下準備
まず、作業場所は「平坦で硬いアスファルトの上」を選んでください。砂利道、泥道、傾斜地でのジャッキアップは、ジャッキが倒れる原因となり極めて危険です。
車を停めたら、以下の3点を必ず実行します。
- パーキングブレーキ(サイドブレーキ)を確実に踏み込む。
- シフトレバーを「P(パーキング)」に入れる。
- ハザードランプを点灯させ、三角表示板を設置して後続車に知らせる。
- 交換するタイヤの「対角線上にあるタイヤ」に輪止め(石や木片でも可)をする。
Step 2:ナットを「緩める」(まだ上げない!)
これが最大のコツであり、初心者が最も失敗するポイントです。ジャッキアップする前に、交換するタイヤのホイールナットを少しだけ(半回転〜1回転程度)緩めておきます。
タイヤが地面に接している状態でないと、ナットを緩める強い力をかけた時にタイヤが空転してしまいます。この段階では「緩めるだけ」で、ナットは外さないでください。

Step 3:ジャッキアップ
ジャッキポイントにジャッキの頭(溝)を正確に合わせ、最初は手でネジを回して、ジャッキを軽く車体に当てます。位置がズレていないこと、ジャッキが垂直に立っていることを再確認してから、工具を使って持ち上げます。タイヤが地面から2〜3cm浮けば十分です。上げすぎると不安定になります。

Step 4:交換と仮締め
緩めておいたナットを全て外し、パンクしたタイヤを取り外します。スペアタイヤをはめたら、ナットを手で回して止まるところまで締めます(仮締め)。この時点では工具で強く締め付ける必要はありません。ガタつかない程度でOKです。

Step 5:ジャッキダウンと本締め
周囲の安全を確認し、車をゆっくり降ろしてジャッキを外します。タイヤが完全に接地し、車の重みが乗った状態で、レンチを使ってナットを「本締め」します。
この時、時計回りに順番に締めるのではなく、「対角線上の順番(星を一筆書きするような順番)」で、2〜3回に分けて均等に締め込んでいくのが重要です。最後に、全体重をかけるのではなく、腕の力で「グッ」と締めれば十分です(規定トルクは103N·mです)。

ジャッキハンドルの回し方と注意点
最後に、付属のジャッキハンドルの正しい使い方をお伝えします。これを知らないと、無駄に体力を消耗します。
組み立てたハンドルは、「コ」の字型のクランク形状になります。これを回す際は、両手で持ち手部分を持って回そうとしてはいけません。軸がブレてしまい、ジャッキからフックが外れやすくなるからです。
正しい回し方:
- 利き手ではない方の手で、ハンドルの「軸(ジャッキに近い直線部分)」を軽く握り、位置を固定します。
- 利き手で、ハンドルの「持ち手(回転する部分)」を握ります。
- 軸を支点にして、利き手で大きく円を描くように回します。
こうすることで、軸が安定し、軽い力でスムーズにジャッキアップすることができます。
作業中の絶対禁止事項
ジャッキアップ中は、車が非常に不安定なバランスの上に立っています。以下の行為は絶対に避けてください。
- 車の下に体を入れる:
地震や突風でジャッキが外れたら即死します。 - 車内で人が動く:
特に子供が乗っている場合は、必ず車外の安全な場所に避難させてから作業してください。 - ドアを開閉する:
振動でジャッキが倒れる可能性があります。
70系ヴォクシーのジャッキ収納場所まとめ
ここまで、70系ヴォクシーのジャッキ収納場所と、緊急時のタイヤ交換手順について、詳細に解説してきました。最後に、この記事の要点をまとめます。
- ジャッキはラゲッジルーム左側の壁面内部に隠されています。
- スペアタイヤは車外の床下にあり、運転席内のサービスホールからボルトを回して降ろす特殊な構造。
- ジャッキアップポイントは、サイドシルの「切り欠き」の間を厳守し、エアロパーツを破損させないよう注意する。
- JAFの出動理由上位はタイヤトラブル。事前の場所確認と、定期的なスペアタイヤの空気圧点検が命を守る。
「ジャッキなんて、廃車にするまで一度も触らない」それが一番幸せなことです。しかし、機械である以上、トラブルのリスクはゼロにはなりません。予期せぬパンクは、楽しいドライブの思い出を一瞬で台無しにするだけでなく、大切な家族を危険に晒すことにもなりかねません。
この記事を読んだ今のうちに、一度ラゲッジのカバーを開けて、「ああ、本当にここにあるんだな」と確認するだけでも、心の準備は全く違ってきます。愛車ヴォクシーとのカーライフをより安全で安心なものにするために、ぜひ一度、晴れた休日に車載工具の点検をしてみてくださいね。準備さえあれば、どんな道でも自信を持って走り出せるはずです。