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愛車のバンパーについた小さな擦り傷を自分で直したい、あるいは長年連れ添ったバイクのタンクを自分好みのカラーに塗り替えたい。
そんなDIY魂に火がついたとき、私たちが最初にぶつかる巨大な壁、それが「道具選び」です。特に塗装の仕上がりを左右する心臓部である「スプレーガン」の世界は、知れば知るほど奥が深く、そして価格の幅が広すぎて目眩がするほどです。

プロの職人が使う機材を調べてみると、ガン本体だけで5万円、10万円というのは当たり前。
さらに専用のカップや手元圧力計、洗浄用キットなどを揃えていくと、とても趣味の範囲で出せる金額ではなくなってしまいます。
「やはり素人は缶スプレーで我慢するしかないのか…」と諦めかけたその時、ネットの海を漂っていてふと目にするのが、「cv1 スプレー ガン」という謎めいたキーワードではないでしょうか。

しかし、期待を胸にこの言葉を検索窓に打ち込んでも、返ってくる答えは混沌としています。
あるサイトでは「デビルビスの偽物」についての激論が交わされ、またあるところでは古い英語のカタログPDFがヒットする。
一体どれが真実で、何が正解なのか。情報の少なさと錯綜具合は、まるで迷宮のようです。
特に、塗装の知識がまだ浅いうちは、見た目が似ている製品の違いが見抜けず、安易に手を出して失敗してしまうリスクも潜んでいます。

実は今、この「CV1」という名称を持つ製品が、世界のDIY塗装シーンを密かに、しかし確実に揺るがしています。
それは、業界の常識を覆すような低価格でありながら、ハイエンド機に肉薄する外観と、工夫次第でプロ並みの塗装を可能にするポテンシャルを秘めているからです。
今回は、この「中華製CV1」について、その正体から、購入時の注意点、そしてじゃじゃ馬を乗りこなすためのマニアックな調整術まで、余すところなく徹底的に解説します。

記事のポイント
  • 検索結果を混乱させている「CV1」という言葉に隠された、本物とコピー品の決定的な違い
  • 価格差10倍以上!本家DeVilbiss DV1と中華製CV1の内部構造や霧化性能の技術的比較
  • 安物ガンでもプロ並みの鏡面仕上げを目指すための、コンプレッサー環境構築と秘密の調整テクニック
  • 使い捨てにするのはまだ早い?格安ガンを長く愛用するための分解洗浄とメンテナンスのプロ流儀

コスパ重視ならcv1スプレーガンがおすすめな理由

私たちDIY愛好家にとって、「コストパフォーマンス」という言葉ほど甘美な響きはありません。
もちろん、湯水のように予算を使えるなら、迷わず最高級のブランドツールを揃えるのが正解でしょう。
しかし、限られたお小遣いをやりくりし、知恵と工夫で安価な道具を使いこなし、高価な機材を使っている人を驚かせるような仕上がりを叩き出す。それこそがDIYの真髄であり、最大の楽しみではないでしょうか。

そういった意味で、この「CV1スプレーガン」は、私たちに強烈な挑戦状と可能性を突きつけてくる存在です。
まずは、この製品がなぜこれほどまでに注目され、そして議論を呼んでいるのか。その背景にある複雑な事情を一つずつ紐解いていきましょう。

デビルビスCViと格安CV1の違い

「cv1」という言葉を調べたときに起こる情報の混乱。これは、同じ「CV1」というキーワードの中に、全く異なる背景を持つ二つのスプレーガンが混在していることに起因します。
私たちが明確に区別すべきなのは、かつてプロフェッショナルに愛されたデビルビス社の「廃盤の名機」と、現在市場を賑わせている「現代の格安機」という決定的に異なる二つの存在です。
ここを混同したまま情報を集めると、適合しない部品を購入してしまったり、自身の目的に合わない機材を選んでしまったりする危険性があります。

① 伝説の名機:DeVilbiss CVi (Compact Vehicle finish)

まず一つ目は、塗装機器の世界的なリーディングカンパニーであるDeVilbiss(デビルビス)社が、2000年代から2010年代にかけて主力製品として販売していたプロ用スプレーガン「CVi」です。正式名称の「i」は小文字で表記されることが多いですが、検索では大文字の「CV1」と混同されがちです。

このモデルの最大の特徴は、「i-System」と呼ばれる革新的な技術にありました。
これは、ガンのボディを変えることなく、エアキャップ(先端の空気が出る部品)を交換するだけで、「Trans-Tech(トランス・テック:中圧高微粒化)」と「HVLP(High Volume Low Pressure:低圧大風量)」という、性格の異なる二つの霧化方式を切り替えられるというものでした。
当時としては画期的なシステムであり、ベースコートには飛散の少ないHVLP、クリアコートには微粒化に優れたTrans-Techといった使い分けが可能でした。

現在は既に廃盤となっており、後継機の「GTi Pro」や「DV1」にその座を譲っていますが、その軽量なマグネシウムボディと扱いやすさから、今でも中古市場では高値で取引されています。
「CV1 部品図」などで検索して出てくる詳細な分解図は、十中八九このモデルのものです。

② 今回の主役:中華製格安スプレーガン CV1

そして二つ目が、今回私たちが徹底解剖する海外製の格安スプレーガンです。AliExpress、eBay、Temu、そしてAmazonのマケットプレイスなどで、「CV1 Professional Spray Gun」といった名称で販売されています。

その外観は、DeVilbissの現行フラッグシップモデル「DV1」に瓜二つです。
マットブラックのボディ、特徴的な形状の調整ノブ、そしてエアキャップのデザインに至るまで、徹底的に模倣されています。
しかし、よく見るとロゴが入っていなかったり、あえて「CV1」という独自(?)の名称を使っていたりと、商標権の侵害をギリギリで回避しようとする涙ぐましい努力が見え隠れします。
これが今、世界中のDIYerの間で「プアマンズDV1(貧者のDV1)」として話題になっている製品の正体です。
名前はかつての名機「CVi」に似ていますが、中身は全くの別物であることを理解しておく必要があります。

名称カテゴリ特徴と現状ターゲット
中華製 CV1格安工具本家DV1の外観を模したコピー品。
一万円で購入可能だが調整必須。
安く全塗装したいDIYユーザー
DeVilbiss CViプロ用工具廃盤の名機。
信頼性は高いが新品入手は困難。
中古を探すプロ、ベテラン

本家DV1との性能比較と価格差

「形が同じなら、性能も同じなんじゃないか?」人間誰しも、そう信じたくなるものです。
しかし、冷徹な現実として、10万円の製品と1万円の製品が全く同じ性能であるはずがありません。
では、その価格差は具体的にどこに現れ、実際の塗装作業にどのような影響を及ぼすのでしょうか。技術的な視点からメスを入れてみましょう。

エア流路設計:最新科学 vs 過去の遺産

DeVilbissのDV1が革新的だったのは、スプレーガン内部の「空気の通り道」を一から再設計した点にあります。
流体力学の解析(CFD)を駆使して設計されており、ガン内部を通る圧縮空気が乱流を起こさず、スムーズにノズル先端まで届く構造になっています。
これにより、低い圧力でも塗料を極めて細かく霧化(微粒化)し、パターンの端まで均一な膜厚を作ることができます。

対して中華製CV1は、外側の形状こそ最新のDV1を模倣していますが、内部の構造は、特許が切れた数十年昔の設計(例えばアネスト岩田のW-71やF75といった名機)をそのまま流用しているケースがほとんどです。
つまり、「ガワは最新スポーツカーだが、エンジンは数十年前の大衆車」のような状態です。
空気の流れに無駄が多く、DV1と同じ感覚で低圧塗装をしようとすると、塗料が十分に霧化されず、ボタボタとした粗い粒子になってしまうのです。

加工精度:ミクロン単位の壁

もう一つの決定的な違いは、金属加工の精度です。
スプレーガンの心臓部は、塗料が出る「ノズル」と、その穴を開閉する「ニードル」です。
プロ用機は、これらがミクロン単位の精度で加工されており、ノズルの穴のど真ん中にニードルが吸い込まれるように収まります(これを同心円度と言います)。

しかし、格安のCV1の場合、ノズルの穴が微妙に楕円だったり、ニードルが僅かに曲がっていたり、エアキャップの空気穴に微細なバリ(加工残り)があったりします。
この僅かなズレが、スプレーパターンの「偏り」を生みます。左側だけ塗料が多く出る、パターンが三日月型に歪む、といった現象です。
これを補正しようとして調整ノブをいじり回し、迷宮入りするというのが、初心者が陥りやすい罠です。

それでもCV1を選ぶ価値はあるのか?

ここまで欠点を列挙しましたが、それでも私は「DIYならアリ」だと断言します。
なぜなら、車の全塗装やパーツ塗装において求められるのは、必ずしも「顕微鏡レベルの完璧さ」ではないからです。
多少のパターンの歪みは、塗り重ね方(オーバーラップ)でカバーできますし、肌の荒れは、乾燥後の磨き(ポリッシング)で修正が可能です。
「プロの仕事道具」としては失格でも、「趣味の遊び道具」としては、その安さは圧倒的な正義であり、十分に楽しめるポテンシャルを持っているのです。

アリエクなどの通販で購入するメリット

日本国内のホームセンターではまずお目にかかれないこのCV1ですが、AliExpress(アリエク)などの越境ECサイトを利用して購入することには、単なる安さ以上のメリットと、知っておくべきリスクがあります。

圧倒的なコストパフォーマンスと所有欲

最大のメリットは、言うまでもなく価格です。送料を含めても15,000円程度で購入可能です。
これは国内メーカーのエントリーモデルの半額以下、プロ用機の10分の1以下です。
浮いたお金で、より良い塗料を買ったり、防毒マスクをグレードアップしたり、予備のガンを買ったりすることができます。

また、中華製ならではの「遊び心」として、カラーバリエーションが豊富な点も見逃せません。
本家DV1にはない、鮮やかなブルー、情熱的なレッド、高級感のあるゴールド、妖艶なパープルなど、美しいアルマイト処理が施されたボディを選ぶことができます。
ガレージの壁に色とりどりのガンが並んでいる光景は、DIYerの心を高揚させてくれるものです。「見た目がカッコいいから使う」というのは、趣味を長続きさせる上で案外馬鹿にできない重要な要素です。

リスク管理:配送と品質ガチャ

一方で、リスクも覚悟しなければなりません。海外からの発送となるため、到着まで2週間〜1ヶ月かかることはザラですし、届いた箱がボコボコに潰れていることもしばしばです。
また、稀にですが「新品なのに部品が足りない」「ネジが切られていない」といった致命的な初期不良品に当たる可能性もあります(いわゆる中華通販のガチャ要素です)。
購入の際は、できるだけ販売実績が多く、レビュー写真が豊富なセラーを選ぶこと、そして万が一の際は英語での返金交渉が必要になる可能性があることを頭に入れておきましょう。

ユーザーの評判や実際の塗装レビュー

実際に人柱となってCV1を購入し、愛車の塗装に挑んだ勇者たちの声を、世界中のフォーラムやYouTubeから集めて分析してみました。評価は「絶賛」と「酷評」に二極化していますが、その理由を読み解くと、製品の特性がより鮮明に見えてきます。

肯定派の意見:「工夫次第で化ける」

高く評価しているユーザーに共通するのは、「価格なりの欠点を理解し、工夫でカバーしている」点です。
「エア圧を高め(3.5bar〜4.0bar)に設定したら、国産の中級機と変わらない微粒化が得られた」
「サフェーサー(下地)用として買ったが、思いのほか調子が良いので、ベースコートもこれで塗っている」
「もし壊れても数千円だから、精神的なダメージが少ない。おかげで気負わずにガシガシ使える」
このように、高圧設定での運用や、サブ機・練習機としての割り切り運用において、CV1は非常に高い満足度を叩き出しています。

否定派の意見:「調整が決まらない」

一方で低評価を下すユーザーの多くは、「箱出しですぐにプロ並みの性能が出ると期待していた」ケースが多いようです。
「パターン幅調整ノブの効きが悪く、全開か全閉かの二択しかない」
「吐出量を絞るとパターンがいびつになり、メタリックの並びが悪くなる(黒ずみが出る)」
「カップの蓋から塗料が漏れてきた」
これらは設計の古さと精度の甘さに起因する問題であり、個体差も大きいため、「ハズレ個体」を引いてしまった可能性もあります。しかし、これらも含めて「中華ガンの味」として楽しめる寛容さが、ユーザーには求められるのかもしれません。

交換用部品やノズル口径の選び方

スプレーガン選びで最も重要なスペックの一つが「ノズル口径」です。CV1を購入する際も、自分の用途に合ったサイズを選ばなければ、どれだけ調整してもまともに塗ることはできません。

1.3mm:最初の1本にして至高の万能サイズ

迷ったらこれを選んでください。自動車補修用塗料(ウレタン塗料)において、最も標準的で汎用性の高いサイズです。ベースコート(色)の塗装から、トップコート(クリアー)の仕上げまで、これ一本で高いレベルで対応可能です。DIYでの全塗装やパーツ補修なら、1.3mmがあれば9割の作業はこなせます。

1.4mm:スピードと膜厚重視

1.3mmよりも塗料の吐出量が多くなります。粘度が高めの塗料や、隠蔽力(下の色を隠す力)の低い色を塗る際に有利です。また、広い面積を一気に塗り上げたい場合や、肌をあまり作らずに「ベタ塗り」で艶を出したい場合にも好まれます。海外のペインターは1.4mmを好む傾向があります。

1.7mm 〜 1.8mm:サフェーサー・下地専用

これは絶対に間違えてはいけないポイントですが、このサイズは「サフェーサー(プラサフ)」や「ポリエステルパテ(スプレーパテ)」などの、ドロっとした粘度の高い下地塗料を吹くためのものです。これでサラサラのベースコートやクリアーを吹こうとすると、塗料が出過ぎてしまい、瞬く間にタレて大惨事になります。

部品供給の「使い捨て」リスク

忘れてはならないのが、CV1にはDeVilbissのような充実したアフターサポートが存在しないということです。
DeVilbissの純正部品は一切適合しません。
ニードルを曲げてしまったり、パッキンが劣化したりした場合、アリエクで「CV1 Repair Kit」を探すことになりますが、必ずしも自分の買った個体に適合するとは限りません。
基本的には「壊れたら修理する」のではなく、「壊れたら新しい本体を買う」という、使い捨てに近い運用になることを覚悟しておく必要があります。

cv1スプレーガンの調整と使いこなすポイント

「安物買いの銭失い」で終わるか、「コスパ最強の武器」として使いこなせるか。
その分かれ道は、ひとえに「環境構築」と「調整技術」にかかっています。
CV1は、ユーザーの腕と知識を試すような、少し気難しいツールです。ここでは、CV1を実戦投入するための具体的なセッティング術を伝授します。

推奨される空気圧やコンプレッサー

CV1を使用する上で最大のハードル、そして多くのDIYerが失敗する原因が「空気不足」です。カタログスペックを見ると、空気消費量が「270〜300 L/min」などと記載されています。これがどれほど絶望的な数字か、ピンとくるでしょうか?

ホームセンターでよく売られている、家庭用100V電源の1馬力コンプレッサー(タンク容量25L〜30L程度)の吐出量は、せいぜい毎分80〜100リットルです。つまり、CV1が正常に霧化するために必要な空気量の、わずか3分の1程度しか供給できないのです。
この状態でトリガーを引くと、最初の2〜3秒は勢いよく出ますが、すぐに圧力が低下し、ガンの先端からは塗料が「ブシュッ、ブシュッ」と雨粒のように飛び散ります。これでは塗装になりません。

100V環境でCV1を使うための「裏技」

では、200Vの工業用電源がない家庭ではCV1は使えないのか? 結論から言えば、工夫次第でなんとかなります。最も効果的な対策は「サブタンクの増設」「インターバル塗装」です。

コンプレッサー本体のタンクに加え、30リットル〜50リットル程度の補助タンク(サブタンク)をエアホースで連結し、空気の「貯金」を増やします。
そして、塗装時は「バンパーを1本塗ったら、手を止めてコンプレッサーが再充填されるのを待つ」という休憩を挟みながら作業します。
連続して車一台を丸ごと塗ることは不可能ですが、パネルごとの補修であれば、この方法で十分にプロ並みの圧力を維持できます。

また、エアホースの内径も重要です。細いコイルホース(内径6mm以下)は圧力損失が激しいため、必ず内径8mm以上の太いストレートホースを使用してください。これだけで手元の圧力が劇的に改善します。

初心者でも失敗しない使い方の基本

道具の性能が低いなら、それを補うのは人間の技術しかありません。特に霧化能力の低いCV1を使う場合、プロ機以上に基本動作を忠実に守る必要があります。

ガン距離は「近め」が鉄則

最新のプロ用ガン(DV1など)は、20cm〜25cm離しても塗料が細かく飛んでいきますが、CV1で離しすぎると、塗料が対象物に届く前に空中で乾燥してしまい、表面がザラザラになる「粉吹き(ドライスプレー)」状態になります。
通常よりも拳一個分近い、15cm〜20cm程度の距離をキープしてください。近すぎるとタレるリスクが高まりますが、遠すぎてザラザラになるよりは、リカバリーが効きます。

運行速度とオーバーラップ率

ガンを動かすスピードは、「一定」であることが何より重要です。
ロボットになったつもりで、肩を使って平行移動させます。
そして、前のラインに次のラインをどれくらい重ねるかという「オーバーラップ(ラップ率)」ですが、CV1の場合はパターンの中央に塗料が集中しやすい(中高パターン)傾向があるため、「50%〜60%重ね」、つまり半分以上重ねるイメージで吹くと、塗りムラ(ストライプ)を防ぎやすくなります。

塗装パターンや吐出量の調整方法

いよいよ実践的な調整です。シンナーを入れた状態で、ダンボールやマスキングペーパーに向かって試し吹きを行いながら、以下の手順でノブを回してください。この「儀式」をサボると、現場で痛い目を見ます。

調整ノブ位置調整手順とコツ
エア調整
(手元圧力)
グリップ下部トリガーを全開にした状態で、手元の圧力計が
0.25〜0.3MPa (2.5〜3.0bar)になるよう設定します。
CV1は高圧でないと綺麗に霧化しません。
仕様書より高めを狙うのがコツです。
パターン調整
(開き)
側面または上部まずは全開(最大幅)にします。
試し吹きをして、もしパターンが割れる
(中央が薄く、上下が濃い)場合は少しずつ締めて、
綺麗な楕円形になるポイントを探します。
塗料吐出量
(ニードル)
後部の大きなツマミ一度締め切ってから、2回転〜2回転半戻します。
全開にすると粒が粗くなるので、
少し絞り気味からスタートし、
「薄く何度も塗り重ねる」意識で
コントロールするのが安全策です。

目指すは「綺麗な葉巻型」

壁に向かって一瞬だけ「パシュッ」と吹いてみてください。
付着した塗料の形が、均一な縦長の楕円形(葉巻型)になっていれば合格です。
もし「ひょうたん型(中央がくびれている)」ならエア圧が高すぎるか吐出量が少なすぎます。
逆に「真ん中だけ濃い円形」ならエア圧不足かパターンが開ききっていません。
このパターンチェックを行わずしていきなり本番塗装に入るのは、目隠しをして運転するようなものです。

使用後の洗浄やメンテナンスの手順

「弘法筆を選ばず」と言いますが、弘法は筆の手入れを怠りません。
特に精度の低いCV1は、内部の研磨が甘いため塗料が残りやすく、少しの汚れで劇的に性能が低下します。塗装が終わったら、塗料が固まる前に「秒で」洗浄を開始してください。

うがい洗いと完全分解

  1. カップに残った塗料を捨て、洗浄用シンナーを入れます。
  2. エアキャップの先端をウエスで強く押さえ、トリガーを引きます。
    すると空気がカップ内に逆流し、「ボコボコボコ」と音を立てて内部の塗料を洗い出します(これを通称「うがい」と呼びます)。
  3. シンナーが透明になるまで数回繰り返し、最後に綺麗に吹き切ります。
  4. しかし、これだけでは不十分です。
    CV1の場合、必ずガンを分解し、ニードルとノズルを取り外して、専用のブラシで溝の奥まで掃除してください。
    特にエアキャップの微細な空気穴は、詰まりの原因になりやすいので、光にかざして穴が貫通しているか確認しましょう。

また、CV1は「ステンレス使用」を謳っていますが、安価なステンレスは錆びることがあります。
水性塗料を使った場合は特に、使用後すぐに水分を完全に除去し、防錆油を薄く塗布しておくことをおすすめします。
ただし、次回の塗装時に油分は大敵(ハジキの原因)となるため、使用前には必ず脱脂洗浄を行ってください。

重要な安全情報:有機溶剤中毒の予防

スプレーガンの洗浄や塗装作業では、シンナーなどの有機溶剤を使用します。
これらを吸入すると、めまいや頭痛、最悪の場合は意識障害を引き起こす可能性があります。
作業時は必ず防毒マスク、保護メガネ、耐溶剤手袋を着用し、換気の良い場所で行ってください。
健康は何よりも代えがたい資産です。

※塗料や機材の取り扱いに関する詳細な安全情報は、厚生労働省のガイドラインや各製品のSDS(安全データシート)を参照してください。
(出典:厚生労働省「職場の安全・衛生」

【まとめ】DIYに最適なcv1スプレーガンの総評

ここまで、中華製CV1スプレーガンの真実について、良い点も悪い点も包み隠さず解説してきました。結論として、このガンは「買い」なのでしょうか?

私の答えは、「目的と環境が合致するチャレンジャーにとっては、最強の選択肢になる」です。

もしあなたが、仕事としてお客様の大切な車を預かり、納期通りに完璧な仕上がりを提供しなければならないプロフェッショナルなら、絶対に買うべきではありません。
迷わず本家のDeVilbiss DV1や、アネスト岩田の正規品を買ってください。それは「安心」と「時間」、そして「信用」を買うことと同義だからです。

しかし、もしあなたが「自分の車やバイクを、自分で直してみたい」「失敗しても、またペーパーで削って塗り直せばいいや」と笑って楽しめるDIY精神の持ち主なら、CV1は最高の教材であり、頼れる相棒になります。一万円のガンで、試行錯誤しながら汗をかき、ピカピカの塗装肌を作れた時の達成感は、何物にも代えがたいものがあります。
そして、CV1で苦労して「塗装の理屈」を体で覚えた後に、いつか本物のプロ機を手にしたとき、あなたはその性能の違いに心底感動し、さらに一段上のレベルへと進むことができるでしょう。

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この記事を書いた人
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とっしー
運営者のとっしーです。DIY歴は20年超。数々の失敗から得た経験を元に、工具のレビューや初心者がつまずくポイントを丁寧に解説しています。あなたの「最高の選択」を全力でサポートします!
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