DIYやバイクのメンテナンス、あるいは家電製品の修理を行っていると、「Cリング(スナップリング)」という馴染みの薄い部品に遭遇することは珍しくありません。
例えばオフィスチェアのキャスター交換時など、軸の奥にある小さなリングの外し方が分からず、作業が止まってしまうというのはよくあるケースです。
解決策を調べて「スナップリングプライヤー」という専用工具の存在を知っても、「たった一回の作業に数千円もかけたくない」と考え、ダイソーなどの100円ショップで代用品を探そうとするのは自然な心理でしょう。
しかし、そこには「似て非なる道具」しか売っていなかったり、無理な代用で部品を破損させたりといった、思わぬ落とし穴が潜んでいます。
本記事では、100円ショップの在庫状況やラジオペンチでの代用の可否、さらには釣り用スプリットリングプライヤーとの決定的な違いについて、実用的な視点から徹底的に解説します。
この記事でわかること
- ダイソー等の100均にCリング専用プライヤーが売っているかどうかの実態
- 釣り用スプリットリングプライヤーとCリング用工具の決定的な違い
- ラジオペンチなどを加工して代用する場合の具体的なリスクと注意点
- 安全に作業するために選ぶべき適切な工具と入手方法
本記事の内容
ダイソーでのCリングプライヤー販売状況と注意点
まずは結論からお伝えすると、私が調査した範囲では、ダイソーをはじめとする100円ショップで「Cリング(スナップリング)専用のプライヤー」を見つけることはできませんでした。
「何でも揃うダイソーならあるはず」「最近の100均は工具も充実しているから」と思ってお店に行くと、似たような工具がたくさん並んでいるため、「どれかが使えるんじゃないか?」と混乱してしまいますよね。
ここでは、私が実際に売り場で確認した内容と、なぜ専用品が見当たらないのか、その理由について私の考察をまとめてみました。

ダイソーにスナップリングプライヤーは売ってない
ダイソーの大型店舗を含め、工具コーナーの端から端までくまなく探してみても、残念ながら「スナップリングプライヤー(Cリングプライヤー)」という商品名の工具は販売されていません。
店員さんに、JANコード(バーコード)や商品画像を見せて確認しても、「現在は取り扱いがない」「以前も見たことがありません」との回答が返ってきます。
なぜダイソーに売っていないのでしょうか。
最大の理由は「精度の問題」だと思われます。
Cリングを安全に外すためには、リングの小さな穴(直径1mm〜2mm程度)にピッタリとハマる、非常に精度の高い先端ピンが必要です。
もし先端が少しでも太ければ穴に入りませんし、細すぎればガタついて作業になりません。
また、Cリングは強力なバネの力で広がろう(または縮まろう)とするため、工具の先端には大きな負荷がかかります。
この精度と強度を、100円(税込110円)や、あるいは300円〜500円の商品コストで実現するのは、製造上のハードルが非常に高いのではないかと思います。
もちろん、店舗の規模や時期によってはラインナップが変わる可能性もゼロではありません。
しかし、ネット上の口コミやSNSでの情報を検索してみても、「ダイソーで買えた!」という確実な情報はここ数年見当たりません。
「基本的には売っていない」と考えておいた方が、無駄足を踏まずに済むでしょう。

釣り用スプリットリングプライヤーとの違い
ダイソーの釣具コーナーに行くと、「スプリットリングプライヤー」という商品が置いてあることがよくあります。
名前に「リング」と「プライヤー」が入っており、形状もなんとなく似ているため、「これだ!見つけた!」と思って手に取ってしまう方も多いかもしれません。
しかし、これらは名前こそ似ていますが、全く別の用途で作られた工具ですので、絶対に間違えて購入しないように注意が必要です。
| 工具名 | スナップリングプライヤー | スプリットリングプライヤー |
|---|---|---|
| 主な用途 | 機械部品の固定(Cリング) 軸や穴からの脱着 | ルアーとフックの接続 キーホルダーのリング開閉 |
| 先端形状 | 細い円柱状のピン(左右対称) リングの穴に差し込む構造 | くさび状・鍵爪状(非対称) リングを「割る」ための構造 |
| 動作原理 | 握ると先端が開く(軸用) 握ると先端が閉じる(穴用) | 握ると先端の爪が噛み合い リングの隙間を物理的にこじ開ける |
スプリットリングプライヤーは、二重になったコイル状のリングの隙間をこじ開けるためのもので、先端の片方が「L字型の鍵爪」のようになっています。
これをCリング(スナップリング)に使おうとしても、そもそもCリングには「こじ開ける隙間」がなく、小さな穴があるだけです。
先端の鍵爪はその穴には入りませんし、無理やり引っ掛けようとしても、滑って工具が外れ、勢いよく指を挟んだり、リングが弾け飛んで紛失したりする原因になりかねません。
名前が似ているだけで購入してしまうと、全く役に立たないので気をつけましょう。

セリアやキャンドゥなど100均の在庫情報
「ダイソーにないなら、セリアやキャンドゥ、ワッツにはあるかも?」と思い、これらのお店も回ってみても結果は同じで、やはりスナップリング専用のプライヤーは見当たらないことがわかるでしょう。
セリアはDIY用品がおしゃれで充実しており、DIY女子向けのアイテムや、木工用の金具などは豊富です。
しかし、やはり本格的な機械整備工具というよりは、ハンドメイドやインテリアリメイク、軽作業向けのラインナップが中心です。
キャンドゥも同様で、最近では電子工作やスマホ関連グッズには力を入れていますが、特殊工具の品揃えに関してはダイソーと大差ありません。
100円ショップ業界全体として、この特定の専門工具は「一般家庭での需要が極めてニッチすぎる」か「製造コストがどうしても100円〜数百円に収まらない」ために取り扱っていない可能性が高いです。
もし今後発売されるとしたら、500円〜700円以上の高額商品枠になるでしょうが、現時点では期待できません。

もしあるなら工具売り場?店舗での探し方
もし今後、奇跡的に入荷されることがあるとすれば、間違いなく「工具売り場」の、特にペンチやニッパー、プライヤーが並んでいるエリアになるはずです。
釣具売り場にあるのは前述の通り「スプリットリング用」ですので、混同しないようにパッケージの裏面や説明書きをよく確認してください。
店舗で探す際のポイントは、先端の形状をよく観察することです。
パッケージ越しに見ても、先端が「細い円柱状のピン(棒)」になっていればCリング用の可能性があります。
逆に、先端が平らだったり、ギザギザしているだけなら普通のペンチです。
また、店員さんに尋ねる際は、「Cリングプライヤー」と言うよりも「スナップリングプライヤー」と言った方が、工具に詳しい店員さんなら伝わりやすいかもしれません。
さらに、「止め輪外し(とめわはずし)」という名称で呼ばれることもあります。
しかし、現状では「ない」ことを前提に、あくまで確認程度に留めておくのが賢明です。

穴用と軸用の違いと専用工具の必要性
Cリング(スナップリング)には、実は大きく分けて2つのタイプがあることをご存知でしょうか。
これを知らずに適当に工具を選ぶと、作業ができないどころか、リングを破壊してしまうことになります。
Cリング(スナップリング)の2つのタイプ
- 軸用(シャフト用):
軸の外側にはまっていて、リングを「広げて(開いて)」外すタイプ。
例:椅子のキャスター軸、バイクのシフトペダル軸など。 - 穴用(ボア用):
穴の内側にはまっていて、リングを「縮めて(閉じて)」外すタイプ。
例:マスターシリンダー内部、ベアリングの固定など。

専用のスナップリングプライヤーには、握ると先端が開く「軸用(開用)」と、握ると先端が閉じる「穴用(閉用)」があります。
(※両方の動作に対応できる「差し替え式」や「コンバーチブルタイプ」もあります)
ここで問題になるのが、ダイソーなどで売られている普通のラジオペンチです。
ラジオペンチは構造上、「握ると閉じる」動作しかできません。
つまり、「穴用」のリングを縮める作業には(先端の形状さえ合えば)力の方向は合っていますが、「軸用」のリングを広げて外す作業には構造的に全く向いていないのです。
「軸用」リングをラジオペンチで外そうとすると、両手を使ってペンチのハンドルを無理やり外側に引っ張り、先端を広げるという、非常にアクロバティックで不安定な操作が必要になります。
これは部品を飛ばしてしまうリスクが非常に高く、推奨できません。
Cリングプライヤーをダイソー商品で代用する技
専用品が売っていないことはわかりましたが、「今回1回外すだけのために、高い工具を買うのはちょっと...」「今すぐ作業を終わらせたいのに」というのが本音ですよね。
私もその気持ちは痛いほどよくわかります。
ここでは、あくまで自己責任にはなりますが、ダイソーで入手できる他の工具を使って代用する方法と、その際に直面するリスクについて、包み隠さずお話しします。

ラジオペンチを使った外し方と加工のコツ
最も一般的な代用品として挙げられるのが「ラジオペンチ」です。
ダイソーでも100円〜300円程度で購入できます。
【加工なしで使う場合】
リングの「穴」に先端を入れるのは諦め、リングの「切れ目の隙間」にペンチの先端を無理やり差し込んで、ぐっと広げる(または縮める)方法です。
ただし、ペンチの先端はCリングの隙間よりも太いことが多いため、リング自体を歪めてしまったり、滑って部品に傷をつける可能性が高いです。
運良く引っかかれば外せることもありますが、成功率は低く、イライラすること間違いなしです。
【加工して使う場合】
こちらはネット上のDIY好きの間でよく見かける方法ですが、100均の安価なラジオペンチの先端を、金属ヤスリやグラインダーで細く削り、Cリングの穴に入るように加工する「自作ツール」を作る技です。
先端を丸く、かつ少し内側に引っかかるような「逆テーパー形状」に削り出せれば、簡易的な代用工具として機能することはあります。
ダイソーにはダイヤモンドヤスリも売っていますので、それを使って根気よく削るわけです。

自作加工のリスク
しかし、この加工には大きな落とし穴があります。
100均の安価なペンチは、金属の材質や焼き入れ(熱処理)が甘いことが多く、先端を細く削ると強度が極端に落ちてしまいます。
Cリングのバネの力に負けて、作業中に先端が「ポキッ」と折れてしまうことが多々あります。
📝注意点
折れた金属片が目に飛んでくる危険があるため、加工した工具を使う際は必ず保護メガネを着用してください。
また、削る労力と時間を考えると、専用工具を買ってしまった方が早いという説も濃厚です。
精密ドライバーでの代用が危険な理由
手元にペンチがない時、ついやってしまいがちなのが「精密ドライバー(マイナス)」を2本使ってこじ開ける方法です。
私も昔、知識がなかった頃にこれでCリングを外そうとして、大失敗をしたことがあります。
この方法は、2本のドライバーをCリングの穴や隙間に引っ掛け、テコの原理で無理やり広げようとするものですが、以下の理由から絶対におすすめできません。
- 支点が安定しない:
ドライバーは滑りやすく、力を入れた瞬間に「ツルッ」と滑ります。その勢いでドライバーが自分の指に刺さったり、対象の機械部品を強く突いて傷つけたりします。 - リングの紛失:
均等に力がかからないため、片方が外れた瞬間にCリングが予期せぬ方向に弾け飛びます。小さな部品なので、一度飛んでいくと二度と見つからないこともあります。 - 部品へのダメージ:
シャフトやハウジング(穴)の縁にドライバーを押し付けて支点にするため、金属部分に深い傷がつきます。これが原因でオイル漏れや回転不良を起こすことがあります。
特に、再利用する予定のCリングを歪めてしまうと、金属疲労で強度が落ち、組み直した後に勝手に外れてしまう原因になります。

バイクや車の整備には代用工具を使わない
ここが一番お伝えしたいポイントなのですが、もしあなたが作業している対象が「バイクのサスペンション」「フロントフォーク」「マスターシリンダー」、あるいは「車のブレーキ周り」「トランスミッション」などの重要部品であるなら、絶対に100均工具での代用は避けてください。
これらの部品に使われているCリングは、工業用規格に基づいて設計されており、非常に強い張力(バネ定数)を持っています。
おもちゃや家具に使われているようなやわらかいCリングとは訳が違います。
安価な代用工具では、この強力なバネに太刀打ちできず、工具が破損するか、リングが変形してしまいます。
最悪のケースとして、変形したCリングをそのまま再使用してしまうと、走行中にリングが脱落し、サスペンションが分解したり、ブレーキが効かなくなったりする大事故につながる可能性があります。
「節約」と「安全」のバランスを考えた時、ここはコストをかけるべき部分だと私は強く思います。
プロの整備士も、この部分には必ず信頼できる専用工具を使用しています。

ホームセンターや通販で買うべき専用工具
では、どこで買うのが正解なのでしょうか。
私の経験上、最も手っ取り早く、かつ確実なのはコーナン、カインズ、ロイヤルホームセンターなどの「大型ホームセンター」の工具売り場です。
価格は1,500円〜2,500円程度で、しっかりとした専用プライヤーが手に入ります。
お店によっては、フジ矢、SK11、高儀(TAKAGI)などのブランドが置いてあるでしょう。
また、Amazonや楽天などのネット通販であれば、選択肢はさらに広がります。
DIYレベルで長く使うなら、新潟県三条市に本社を置く「トップ工業(TOP)」や、日本を代表する工具メーカー「KTC(京都機械工具)」の製品が圧倒的におすすめです。
これらのメーカーのプライヤーは、先端のピンに「逆テーパー加工(リングが外れにくいように先端がわずかに外を向いている)」や「ローレット加工(滑り止めのギザギザ)」が施されており、Cリングをガッチリと保持してくれます。
「カチッ」と穴にハマり、不安なくリングを広げられる感覚は感動すら覚えます。
一度この感覚を知ってしまうと、もうラジオペンチでの危なっかしい代用作業には戻れません。
📝選び方のコツ
頻繁に使わないのであれば、「軸用」と「穴用」の切り替えができる「差し替え式(コンバーチブルタイプ)」のプライヤーを1本持っておくと、場所も取らず便利ですよ。
また、先端パーツ(ビット)が交換できるタイプなら、万が一先端が折れてもビットだけ買い換えれば済みます。
専門メーカーの製品については、以下の公式ページなどで詳細な仕様や正しい使い方を確認することができます。
まとめ:Cリングプライヤーはダイソーになく危険
今回の調査で、ダイソーやセリアなどの100円ショップには、Cリング(スナップリング)専用のプライヤーは販売されていないことがわかりました。
売り場にある「スプリットリングプライヤー」は釣り用であり、Cリングには使えません。
ラジオペンチを加工して代用することは技術的には可能ですが、先端の破損や部品の紛失、怪我のリスクが常につきまといます。
おもちゃや簡単な家具の修理ならまだしも、バイクや車などの重要な整備においては、安全のために適切な専用工具を用意することを強くおすすめします。
結果的にその方が、失敗して部品を買い直すよりも安く済み、何より安全に作業を終えることができます。
道具への投資は、作業の楽しさと安全を買うことと同じです。
ぜひ、適切なツールを手に入れて、快適なDIYライフを送ってくださいね。