ハイエースのメンテナンス、特にタイヤ交換や足回りの点検を自分でやろう!と思ったとき、最初に悩むのが「ジャッキ選び」ではないでしょうか。
「ハイエースには3トンジャッキが必要」とよく聞くけれど、2トンじゃダメなの? ローダウンしてるけど、どんなジャッキなら入る? 安全なジャッキアップポイントはどこ? ジャッキスタンド(ウマ)の使い方は? ……など、疑問がたくさん出てくると思います。
ハイエースのジャッキ選びは、安全に作業するために本当に重要なポイントです。実はハイエースの「車両総重量」を知ると、なぜ3トンクラスが推奨されるのかがハッキリと見えてきます。

この記事では、なぜハイエースに3トンジャッキが必要なのかという明確な理由から、ローダウン車にも対応できるジャッキの選び方、そして最も重要な「安全なジャッキアップの手順」まで、DIY仲間の視点で分かりやすく解説していきます。
- なぜ「2トン」ではなく「3トン」ジャッキが必須なのか
- 標準車高とローダウン車でのジャッキの選び方
- 安全なジャッキアップポイント(フロントとリア)
- ジャッキスタンド(ウマ)の正しい設置場所
本記事の内容
3トンジャッキがハイエースに必要な理由
ハイエースのジャッキについて調べると、必ず「3トン」というキーワードが出てきます。正直、私も最初は「2トンで十分じゃない?」と思っていました。ハイエース自体は2トン未満のモデルもありますし、持ち上げるのは車全体の重さではないですからね。
ですが、これはDIY整備における重大な落とし穴でした。安全装備に関する考え方として、「最低限」と「最適」は全く違います。ハイエースという、業務使用やレジャーで「積載」が前提となる車の整備において、「2トン」は最低限すら満たしていない可能性があるのです。
このセクションでは、なぜ3トンクラスがオーバースペックではなく、安全のための「必須装備」であると私が結論付けたのか、その根拠を詳しく掘り下げていきます。

2トンジャッキでは危険な理由
最大の理由は、私たちがジャッキの能力を判断する基準となる「重さ」の定義を誤解していることにあります。
多くの方が「ハイエースの重さ」として認識しているのは、カタログなどに載っている「車両重量」です。ハイエース(200系)の車両重量は、モデルによって約1,800kgから2,100kg程度です。
これだけ見ると、「なんだ、2トン(2,000kg)ジャッキで余裕じゃないか」と判断してしまいがちです。私も最初はそう考えていました。
しかし、整備や安全管理の世界で基準としなければならないのは、「車両重量」ではありません。「車両総重量」です。
【重要】「車両重量」と「車両総重量」の決定的な違い
この2つの言葉は似て非なるもので、安全を考える上で非常に重要です。
- 車両重量:
いわば「車の素の重さ」です。車両本体に、ガソリン満タン、エンジンオイル、冷却水など規定量の油脂類を含んだ状態の重さです。ここには人や荷物は一切含まれていません。 - 車両総重量:
「走行できる最大の重さ」です。上記の車両重量に加え、最大定員分の乗員(日本では1人55kgとして計算)と、法律で定められた最大積載量の荷物をすべて積んだ状態の総重量を指します。
車検証にもこの2つは明確に区分されて記載されています。
私たちがタイヤ交換やオイル交換をする時、車は常に「車両重量」の状態でしょうか?
ハイエースは特に、キャンピングカー仕様に改造されていたり、仕事道具や資材、工具箱を常に積みっぱなしにしていたりするケースが非常に多い車です。レジャー用途でも、キャンプ道具や自転車、その他の重い荷物を積んだまま整備することもあるでしょう。
その場合、実際の重さは「車両重量」を大幅に上回り、「車両総重量」に近づいていきます。この「実際に作業するときの重さ」を想定せずにジャッキを選ぶことは、非常に危険な行為なのです。

車両総重量3トン超えの根拠
では、ハイエースの車両総重量は実際どのくらいなのでしょうか。これを知ると、2トンジャッキという選択肢がいかに危険かが明確になります。
トヨタ自動車が公式に発表している主要諸元表によれば、ハイエース(200系)の一部のモデルでは、車両総重量が3,000kg(つまり3トン)を明確に超過しています。
例えば、ハイエースバン(型式:3BF-TRH221Kなど)の仕様では、車両総重量が 3,115kg に達するモデルが存在します。(出典:トヨタ自動車公式サイト ハイエースバン主要諸元表)
これは、ジャッキの選定基準が最低でも3トンクラスでなければならないことを示す、動かぬ証拠です。
ご自身のハイエースの車検証を確認してください
お持ちのハイエースの正確な車両総重量は、車検証(自動車検査証)の「車両総重量」の欄を見ればすぐに分かります。「車両重量」の欄と見比べ、「こんなに違うのか」と驚かれるかもしれません。
まずは、ご自身の車がどれだけの重さになる可能性があるのかを正確に把握することが、安全な工具選びの第一歩です。
ジャッキの「安全マージン」という考え方
「ジャッキアップは車全体を持ち上げるわけではなく、前か後ろの半分だから、3,115kgの半分(約1,558kg)なら2トンジャッキで足りるのでは?」という疑問も出てくると思います。
これも危険な誤解です。機器の安全運用における大原則として、その最大能力の100%で(あるいはそれに近い状態で)使用することは想定されていません。SGマーク(製品安全協会)の基準などでも、安全マージン(余裕)を確保することが強く求められています。
一般的に、ジャッキのような吊り上げ・保持器具は、最大能力の70%~80%の範囲内での運用が推奨されます。
仮に車両総重量3,115kgのハイエースの半分(約1,558kg)を持ち上げる場合、2トン(2,000kg)ジャッキでは、いきなり能力の約78%に達してしまいます。これは、推奨される安全マージン(20%~30%)をほぼ使い切った、ギリギリの状態です。
もし、荷物の積み方で重心が偏っていたら? 作業場所が気づかない程度にわずかに傾斜していたら? ジャッキアップポイントが少しズレていたら?
これらの不確定要素が加われば、局所的にかかる負荷は容易に2,000kgを超え、ジャッキの破損や油圧抜け、最悪の場合は車両の落下といった重大事故につながります。
したがって、ハイエースのメンテナンスを行う上で、「3トン」クラスの能力を持つフロアジャッキは、オーバースペック(過剰性能)ではなく、安全を確保するための「必須装備」であると結論付けられます。
フロアジャッキが最適な理由
ハイエースに必要な能力が「3トンクラス」であると分かったところで、次に「ジャッキの種類」についてです。車を持ち上げる道具にはいくつか種類がありますが、ハイエースの整備作業には「フロアジャッキ(ガレージジャッキ)」一択だと、私は考えています。
主なジャッキの種類と、ハイエース整備における適性を比較してみましょう。
| ジャッキの種類 | 特徴 | ハイエース整備への適性 |
|---|---|---|
| 車載ジャッキ (パンタグラフ式) | 車に標準搭載されている。 軽量・コンパクト。 | × 不可 パンク修理などの「緊急用」。 安定性が極めて低く、 整備作業に使うのは厳禁。 |
| ボトルジャッキ (ダルマジャッキ) | ピンポイントで大きな力 (3トン超も多数)を出せる。 コンパクト。 | △ 不向き 受圧面積(車体と接する面)が小さく不安定。 ハイエースのジャッキポイント(面)での 使用には適さない。 |
| フロアジャッキ (ガレージジャッキ) | 本体重量があり、 車輪で移動可能。 安定性が非常に高い。 | ◎ 最適 安定性、安全性、作業性すべてにおいて DIY整備に最も適している。 |
なぜ車載ジャッキではダメなのか?
車載のパンタグラフジャッキは、あくまでも「緊急用」です。タイヤがパンクした際に、一時的に交換するためだけに設計されています。構造上、ネジで上下させているだけで、横方向の力(車が少し揺れるなど)に非常に弱く、簡単に倒れてしまいます。あれで車体を保持したまま下に潜るなど、考えただけでも恐ろしいです。絶対に整備作業に使ってはいけません。
なぜボトルジャッキは不向きなのか?
ボトルジャッキは、少ない力で大きな重量を持ち上げられる優れた道具ですが、その力が「点」でかかるのが特徴です。ハイエースのジャッキアップポイントである「クロスメンバー」や「デフケース」は、ある程度の「面」で受けることを想定しています。受圧面が小さすぎると、車体が不安定になったり、ポイントを傷めたりする可能性があります。
フロアジャッキが最適な理由
フロアジャッキは、本体が重く、低重心で、広い設置面積と車輪を持っています。これにより、圧倒的な安定性を誇ります。
さらに重要なのが、ジャッキアップの際、車はわずかに円弧を描いて手前に動くのですが、フロアジャッキは本体の車輪がその動きに「追従」してくれる点です。この追従機能がないと、ジャッキポイントがズレて外れてしまう危険がありますが、フロアジャッキはそのリスクを構造的に解消してくれます。
ハイエースという重量級の車を安全に扱うには、フロアジャッキ以外の選択肢はない、と私は断言します。
ローダウン車向けの低床選び
「3トンのフロアジャッキ」と決まっても、次に「どのモデルを選ぶか」という問題が出てきます。ここで最も重要な基準が、「ご自身のハイエースが標準車高か、ローダウン(車高短)か」です。
これにより、チェックすべき「ジャッキの高さ」が変わってきます。
標準車高の場合:重要なのは「最高位」
ハイエース(200系)の標準的な最低地上高は約200mm(20cm)ほどあります。そのため、一般的なフロアジャッキ(最低位が130mm~150mm程度)が車体の下に入らない、ということはまずありません。
標準車高のオーナーが気にするべきは、むしろ「最高位(最大揚程)」、つまり「どこまで高く上げられるか」です。
ハイエースは商用車ベースであるため、サスペンションのストローク(伸び縮みする幅)が非常に大きいのが特徴です。ジャッキアップポイントで車体を持ち上げ始めても、タイヤが地面から離れるまでに、サスペンションがビヨーンと伸びるため、かなりの高さまで上げる必要があります。
タイヤを地面から完全に浮かせ、さらに安全のためにジャッキスタンド(ウマ)を設置するスペース(最低でも300mm~、できれば400mm~500mm)を確保できる、最高位が500mm以上に達するモデルを選ぶと、作業に余裕が生まれて安心です。

ローダウン車の場合:最重要なのは「最低位」
ハイエースのカスタムユーザーには非常に多い、ローダウン仕様車。この場合は、チェックする項目が逆転します。最重要項目は「最低位(ジャッキの侵入高)」です。
エアロパーツなどを装着していると、車体と地面の隙間が100mm(10cm)以下になっていることも珍しくありません。こうなると、一般的な最低位130mm~のフロアジャッキでは、ジャッキ本体が車体の下に入らず、ジャッキアップポイントに到達することすらできません。
この場合は、「低床」「ローダウン」「ロープロファイル」といった名称で販売されているフロアジャッキが必要になります。これらのモデルは、最低位が75mm~85mm程度と非常に低く設計されており、カスタムされたハイエースの狭い隙間にもスムーズに差し込むことができます。
作業効率を激変させる「デュアルポンプ」機構
ジャッキを選ぶ際、ぜひチェックしてほしい機能が「デュアルポンプ(ダブルピストン)」機構です。
これは、ジャッキの心臓部である油圧ピストンが2つ(デュアル)搭載されているモデルで、安価なシングルポンプ式と比べて、作業効率が劇的に変わります。
無負荷時(ジャッキの皿が車体に接触するまで)の上昇スピードが非常に速く、ハイエースのような重量級かつ高ストローク(高く上げる必要がある)の車で、何度もハンドルをギコギコとポンピングする作業時間と疲労を、劇的に短縮してくれます。
シングルポンプ式に比べて価格帯は上がりますが(3トン・低床・デュアルポンプ式で約2万円~)、ハイエースクラスの整備においては、その価格差以上の価値(時間短縮と疲労軽減)があると、私は強く感じています。
SGマークとJIS規格の重要性
ジャッキは、作業中に数トンの車体を支える、文字通り自分の命を預ける重要な安全器具です。この認識は、何度強調してもしすぎることはありません。
インターネット上では、驚くほど安価な3トンフロアジャッキが販売されていることもあります。しかし、私はそうした安価すぎるノーブランド品は、安全上の観点から避けるべきだと考えています。
材質の強度不足、油圧シールの耐久性不足による早期のオイル漏れ、溶接部分の不良、安全基準を満たしていない設計……。安さには必ず理由があり、その「理由」が、作業中の重大事故に直結する可能性があるからです。
そこで、最低限の安全基準として確認したいのが、以下の2つのマークや規格です。
JIS規格 (JIS D8101 自動車用油圧式携行ジャッキ)
「JIS(日本産業規格)」は、製品の品質や安全性を規定する日本の国家規格です。この規格に準拠している、あるいは適合していると謳っている製品は、一定の品質基準(耐久性試験、安全率など)をクリアしていると期待できます。
SGマーク (製品安全協会)
「SGマーク」は、"Safety Goods"(安全な製品)の略で、製品安全協会が定める安全基準をクリアした製品に付けられます。このマークが付いた製品は、一般消費者の安全を確保するように設計・製造されていることを示します。
SGマークの最大のメリットは、万が一その製品の欠陥によって人身事故が発生した場合、賠償制度(対人賠償責任保険)が付随する点です。これは、メーカーと製品安全協会が、それだけ製品の安全性に自信を持っている証拠とも言えます。
また、SG基準適合品には、安全な使用法(例:輪止めの使用、ジャッキアップ状態での保持の禁止)を明記した取扱説明書の添付が義務付けられています。安全教育の観点からも、非常に重要な取り組みです。
「安物買いの命失い」にならないために
ジャッキ選びで数千円をケチった結果、ジャッキが破損して数十万円、数百万円の愛車を壊してしまったり、あるいは取り返しのつかない人身事故を起こしてしまったりしては、元も子もありません。
自らの命と大切な愛車を守るためにも、JIS規格やSGマークといった、信頼できる安全基準を満たした製品を選ぶことを、私は強く推奨します。
3トンジャッキのハイエース安全使用術
最適な3トン・フロアジャッキを選定したら、いよいよ実践です。しかし、ここからが本番です。「正しい道具」を「正しい手順」で使わなければ、安全は確保できません。
ジャッキアップ作業は、一歩間違えれば車両の落下という重大事故につながる危険な作業であると、常に認識してください。SG基準の取扱説明書などで定められた安全措置を、面倒くさがらずに一つひとつ確実に実行することが、事故を防ぐ唯一の鍵です。

作業開始前! 必須の安全確認(SG基準に基づく)
ジャッキアップ作業を開始する前に、以下の安全措置を必ず、「絶対に」実行してください。
- 場所の選定:
必ず、水平で、固く、平坦なコンクリートやアスファルトの地面で作業してください。
砂利、土、不整地、傾斜地での使用はジャッキが傾いたり沈んだりするため厳禁です。 - 輪止め(車止め):
ジャッキアップする車軸の「反対側」のタイヤに、必ず輪止め(タイヤストッパー)を前後に確実に施してください。- 例:フロント(前輪)を上げるなら、リアタイヤ(後輪)の両方に輪止め。例:リア(後輪)を上げるなら、フロントタイヤ(前輪)の両方に輪止め。
これは、ジャッキアップで車体が傾いた際に、残った車輪が転がって車が動き出すのを防ぐための、命綱とも言える措置です。 - 車両の固定:
エンジンを完全に停止し、パーキングブレーキ(サイドブレーキ)を確実にかけます。
AT車はシフトを [P] (パーキング) レンジに、MT車は [R] (バック) または [1] (ロー) に入れてください。 - 厳重警告(最重要):
作業開始から終了まで、絶対に「ジャッキアップしただけ」の車両の下には入らないでください。
油圧ジャッキは「持ち上げる」道具であり、「保持する」道具ではありません。この警告は、この後も何度も出てきます。
フロントのジャッキアップポイント
フロアジャッキ(ガレージジャッキ)を使用する場合、車載ジャッキのポイント(車体の端にある切り欠き)とは異なる、車体中央にある強度の高い「指定ポイント」を使用します。
正しい位置:フロントサスペンション・クロスメンバー
ハイエースのフロント(前輪)側の正しいジャッキアップポイントは、車両のフロント下を覗き込んだ時に確認できる、エンジン真下(オイルパンの後方)にある、黒色で太い鉄の部材(フロントサスペンションのクロスメンバー)の中央部です。
左右のサスペンションを連結している非常に頑丈な骨格部品であり、ここがフロアジャッキでフロント全体を持ち上げるための指定ポイントです。

危険(誤りやすい位置):オイルパンとアンダーカバー
この作業で最も恐ろしい間違いが、ジャッキをかける場所を誤ることです。
警告:絶対にジャッキをかけてはいけない場所(フロント)
- エンジンの「オイルパン」:
エンジンの真下にある、オイルが溜まっている部品(多くはアルミ製か薄い鉄板製で、ドレンボルトが付いている)です。
ここには絶対にジャッキをかけないでください。
荷重に耐えられず、オイルパンが割れたり変形したりして、エンジンオイルが全量漏れ出します。
それに気づかずエンジンをかければ、エンジンが焼き付き、廃車につながる可能性もある重大な故障を引き起こします。 - 樹脂製の「アンダーカバー」:
車体下部を覆っている黒い樹脂製のカバーです。
これは単なるカバー(整流板)であり、一切の荷重に耐えられません。かけるとバキバキに割れるだけで、車は持ち上がりませんし、非常に危険です。
ポイントが分からない場合は、無理をせず、ディーラーや整備工場に確認するか、整備解説書を参照してください。
リアのジャッキアップポイント
次に、リア(後輪)側を持ち上げる場合のポイントです。
正しい位置:ディファレンシャルギア・ケース(デフケース)
ハイエースのリア側(FRまたは4WD)の正しいジャッキアップポイントは、車両後方から覗き込み、スペアタイヤのすぐ手前(前方)にある、丸く膨らんだ「デフ(ディファレンシャルギア)ケース」の平らな部分です。
ここもリアアクスル(車軸)の中央に位置し、リア全体を持ち上げるための強度を持つ指定ポイントです。
注意点:デフのドレインコック(ドレンプラグ)を避ける
デフケースにジャッキをかける際、一点だけ注意が必要です。デフケースの下部や側面には、デフオイルを抜くための「ドレインコック(ドレンプラグ)」というボルトが突き出ていることがあります。
ジャッキの皿が、このドレンコックに絶対にかからないように注意してください。ドレンコックに負荷をかけてしまうと、破損してデフオイル漏れの原因となります。必ず、ドレンコックを避けた、頑丈で平らなケース本体の部分にジャッキを当ててください。

【推奨】フロアジャッキ用ゴムパッド(ラバーパッド)の使用
フロアジャッキの受金(皿)は、ギザギザの付いた金属製が一般的です。これをそのままクロスメンバーやデフケースにかけると、車体の塗装が剥げたり、傷が付いたり、滑りの原因になったりします。
作業の安定性を高め、車体を保護するために、「フロアジャッキ用ゴムパッド(ラバーパッド)」の使用を強く推奨します。ジャッキの皿と車体の間にこのゴムパッドを挟むことで、金属同士の接触を防ぎ、滑り止め効果とクッション性が得られます。
車載ジャッキポイント(サイドシル)にかける必要がある場合は、サイドシルの「つまみ」部分を潰さないための「溝付きゴムアダプター」という専用品もありますので、目的に合わせて使い分けると良いでしょう。
必須!ジャッキスタンドの使い方
さて、ここが本日の内容で、最も重要かつ、あなたの命に直結するセクションです。
ジャッキアップ作業における死亡・重傷事故のほとんどは、「ジャッキスタンド(通称:ウマ)の不使用」または「設置場所の誤り」によって発生しています。
もう一度、厳重に警告します。 油圧ジャッキは、その構造上、「保持する」ための道具ではありません。
油圧ジャッキは、油の圧力を利用して車体を持ち上げます。しかし、その油圧は、シリンダー内部の微細なシールの劣化や、リリースバルブのわずかな緩みによって、時間とともに(あるいは何かの拍子に)ゆっくりと、あるいは急速に抜けてしまうリスクが常につきまといます。
「自分のは新品だから大丈夫」「さっき確認したから大丈夫」という過信は通用しません。作業に夢中になっている間に、車体が静かに下がってきて、気づいた時には車体に挟まれていた、という悲惨な事故が後を絶たないのです。
【最重要警告】ジャッキだけで保持された車両の下に入るな!
SG基準においても「このジャッキはジャッキアップした状態を維持するための道具ではない」と明確に警告されています。
- 油圧ジャッキは「持ち上げる(ジャッキアップ)」・「下ろす(ジャッキダウン)」ための道具。
- ジャッキスタンド(ウマ)は「保持する(維持する)」ための道具。
この役割分担は絶対です。ジャッキだけで保持された車両の下に体の一部でも入れる行為は、自らの命を危険に晒す、絶対に行ってはならない行為です。タイヤ交換のように車の下に潜らない作業であっても、万が一車体が落下すれば、手や足を挟まれて大怪我につながります。
車体を上げたら、必ずジャッキスタンドで車体を確実に保持してください。
ジャッキスタンドの安全な使い方
ジャッキスタンドの正しい選び方や、より詳細な安全な使用方法については、こちらの記事で徹底的に解説しています。ジャッキアップ作業を行う前には、必ずご一読ください。
ジャッキスタンドの設置位置
では、その命綱であるジャッキスタンド(ウマ)は、ハイエースのどこに設置すればよいのでしょうか。
安全な作業の基本フローは、「中央(フロアジャッキ)で上げ、両サイド(ジャッキスタンド)で受ける」です。つまり、ジャッキアップポイントとジャッキスタンドの設置ポイントは異なります。
フロント(前輪)の設置位置
- 手順 1 (上げる):
フロアジャッキを「フロントサスペンション・クロスメンバー」(中央)にかけ、車両前方をジャッキアップします。
ジャッキスタンドを設置できる十分な高さ(タイヤが地面から数センチ浮き、スタンドが入る高さ)まで上げます。 - 手順 2 (受ける):
上昇してできたスペースの左右両側、「フレームメンバー」にジャッキスタンドを2基設置します。
この「フレームメンバー」とは、車載ジャッキをかける場所(サイドシル)のすぐ内側(車体中央側)にある、車体の前後方向に通っている強固なフレーム(骨格)のことです。ここが車体を安全に保持できる、最も強度の高い部分の一つです。
(注意:車載ジャッキポイントであるサイドシルの「つまみ」部分には、ジャッキスタンドの平らな上面はかけられません。必ずその内側にある、平らで頑丈なフレームにかけてください。)
リア(後輪)の設置位置
- 手順 1 (上げる):
フロアジャッキを「デフケース」(中央)にかけ、車両後方をジャッキアップします。 - 手順 2 (受ける):
上昇してできたスペースの左右両側、後輪の前方にある「フレーム」にジャッキスタンドを2基設置します。
(※注:ハイエースのリアは構造上、リーフスプリングの付け根(ブラケット)や、ホーシングアクスルチューブ自体にかける場合もありますが、最も安全で一般的なのは、フロント同様に強固なフレーム部分です。ご自身の車両の構造をよく確認してください。)
ジャッキダウン(スタンドに預ける)と安全確認
ジャッキスタンドを左右の指定位置にセットしたら、フロアジャッキのリリースバルブを一気に緩めず、「ゆっくり」と回して、静かに車両を下降させていきます。
車体の重さがジャッキスタンドに確実にかかり、安定したことを確認してください。この際、スタンドがズレたり、傾いたりしないか、細心の注意を払います。
完全にジャッキスタンドに重さが乗ったら、フロアジャッキは荷重がかからない程度(ただし、万が一のバックアップとして、車体に軽く触れる位置)に留めておくか、一旦外します。
作業前に、車体を軽く(手で)揺すってみて、ジャッキスタンドが安定しており、グラつかないかを最終確認してください。
カースロープの活用テクニック
ここまでジャッキアップの方法を解説してきましたが、特にローダウン車オーナーの方から「そもそも、低床ジャッキすら車体の下に入らない!」という悲鳴が聞こえてきそうです。エアロパーツが付いていると、本当に入りませんよね。
そんな時に、ジャッキアップ作業の「補助具」として非常に有効なのが「カースロープ(ジャッキサポート)」です。
これは、タイヤを乗り上げさせるための「坂(スロープ)」で、これを使うことで車体と地面の間に数センチ(製品によりますが、約7cm~8cm程度)のスペースを人工的に作り出すことができます。
このわずかなスペースさえあれば、今まで入らなかった低床フロアジャッキを、フロントのクロスメンバーやサイドのフレーム下にスムーズに差し込むことが可能になります。
カースロープの選び方と使い方
- 選び方:
ハイエースクラスの重量に耐えられるよう、「耐荷重 3t(2個使用時)」といった高耐荷重な製品を選んでください。
また、ローダウン車に対応した「低角度(スロープ角度が緩やか)」なモデルがおすすめです。
素材は軽量なPP(ポリプロピレン)製が扱いやすいでしょう。 - 使い方:
フロントを上げる場合は、前輪の前にカースロープを2個設置し、ゆっくりと乗り上げさせます。
この際、必ずリアタイヤに輪止めをすることを忘れないでください。
スロープに乗り上げた状態で、前述のジャッキアップ手順(フロアジャッキ+ジャッキスタンド)を開始します。
おすすめの3トンフロアジャッキ3選
ここまで、ハイエースになぜ3トンジャッキが必要で、どのように安全に使えばよいかを詳しく解説してきました。理論は分かったけれど、「じゃあ、具体的にどんな製品を選べばいいの?」と思われる方も多いと思います。
市場には「3トン」を謳うフロアジャッキが本当にたくさんあり、価格も機能も様々です。そこでこのセクションでは、これまでの解説(3トン必須、低床/高リフト、デュアルポンプ、安全性)を踏まえ、私がDIYユーザー目線で「ハイエースオーナーなら、このモデルを軸に検討すべき」と考える、具体的な製品を3つピックアップして紹介します。
【最重要】製品選びに関するご注意
ここで紹介するのは、特定の製品の購入を強く推奨するものではなく、あくまで「こういう基準で選ばれた、人気の高い製品がありますよ」という選び方の具体例です。
ジャッキのスペック(特に最低位・最高位)は、ご自身のハイエースの仕様(年式、グレード、標準車高かローダウンか、エアロの有無)によって「最適解」が異なります。
購入前には必ず、ご自身の車のジャッキアップポイントの実測値(地面からの高さ)と、製品のスペック(最低位・最高位)を厳重に照らし合わせて、最終的な判断をしてください。
おすすめ(1):ARCAN (アルカン) 3t ハイブリッドジャッキ (HJ3000JP等)
DIYユーザー、特にコストコなどで見かけて気になっている方も多いのではないでしょうか。アメリカのARCAN(アルカン)社製のハイブリッドジャッキです。
最大の特徴は、強度が必要な部分はスチール、軽量化したい部分はアルミを使った「ハイブリッド構造」です。3トンクラスのジャッキは30kg~40kgの重量物が普通ですが、このモデルは約26kg~と、比較的軽量で取り回しがしやすいのが大きなメリットです。
注目するスペックは以下の通りです。
- 能力: 3トン
- 最低位: 約100mm
- 最高位: 約465mm (モデルにより若干の差あり)
- 機構: デュアルポンプ搭載
最低位が約100mmと低床設計のため、多くのローダウン仕様ハイエースに対応可能です。デュアルポンプ搭載で作業もスピーディ、最高位も465mmとジャッキスタンドをかけるには十分な高さを確保できます。
DIY愛好家の間で非常に人気が高く、「迷ったらコレ」という選択肢の一つとして、まず名前が挙がるモデルだと思います。
おすすめ(2):大橋産業(BAL) No.1339 ローダウンジャッキ 3t
「どうせ買うなら、ローダウンにもリフトアップにも対応できる、最強スペックのものが欲しい」という方に、私が注目しているのがこのモデルです。国内の老舗カー用品メーカーである大橋産業(BAL)の製品です。
このジャッキのスペックは、まさに「全部入り」です。
- 能力: 3トン
- 最低位: 85mm
- 最高位: 533mm
- 機構: デュアルポンプ搭載
最低位が85mmというのは、市販の3トンジャッキの中でもトップクラスの低さで、かなりアグレッシブなローダウンカスタムやエアロ装着車でも対応できる可能性が非常に高いです。それでいて、最高位は533mmと、標準車高ハイエースの長いサスペンションストロークも余裕でカバーし、リフトアップ車にも使えるほどの圧倒的なリフト量を誇ります。
「低いところから、ものすごく高いところまで」をデュアルポンプで一気に持ち上げられる、ハイエースの多様なカスタムスタイルに対応できる、非常に守備範囲の広い一台と言えるでしょう。
おすすめ(3):エマーソン(Emerson) EM-514 フロアジャッキ 3t
最後にご紹介するのは、「ハイスペックさよりも、国内基準の安全性を最優先したい」という堅実派の方に注目してほしいモデルです。ニューレイトン社のエマーソンブランドで、3トン・SG規格適合品として販売されています。
このモデル(EM-514)のスペックは、前述の2モデルとは少し方向性が異なります。
- 能力: 3トン
- 最低位: 135mm
- 最高位: 435mm
- 機構: デュアルポンプ非搭載(シングルポンプ)
スペックを見て分かる通り、これは低床モデルではありません。最低位が135mmですので、ローダウン車には対応できません。ターゲットは明確に「標準車高のハイエース(4WDや1BOX車)」となります。
最高位は435mmと、標準車高のタイヤ交換やウマをかける作業には十分な高さを確保しています。デュアルポンプ非搭載のため、上昇スピードは前述の2モデルに劣りますが、その分、価格が抑えられている傾向があります。
このモデルをピックアップした最大の理由は、「3トン」の能力を持ち、かつ「SGマーク(製品安全協会)適合品」であるという信頼性です。記事本編でも解説した通り、SGマークは万が一の対人賠償保険も付随する「安全の証」です。
ローダウン車には使えませんが、「標準車高のハイエース」のオーナーで、「ハイスピードさより、SG規格に準拠した安心感を重視したい」という方には、堅実な選択肢となるモデルです。
ご自身のハイエースに最適な一台を
具体的なモデルを3つ挙げましたが、それぞれに特徴があります。
- ARCAN:
DIY人気とハイブリッドの軽量性、コストバランス。 - 大橋産業(BAL) 1339:
圧倒的なリフト量(85mm~533mm)で、どんな車高にも対応したい方向け。 - エマーソン(Emerson)
EM-514: ハイスペック(85mm~515mm)に加え、SGマークという「安全性」を最重視する方向け。
ご自身のハイエースの車高、整備の頻度、そして安全に対する考え方を基に、最適な一台を選んで、安全なDIYライフを楽しんでください。
総括:3トンジャッキとハイエース整備
最後に、ハイエースの安全なジャッキアップ作業について、重要なポイントを総括します。
ハイエースのメンテナンスにおいて、3トンジャッキは「あれば安心」な道具ではなく、「安全のための必須アイテム」です。その根拠は、ハイエースの一部のモデルで、車両総重量が3トン(3,000kg)を明確に超えるという事実にあります。
車両総重量が3トンを超える可能性のある車に対し、安全マージンを考慮すれば、2トンジャッキで作業するのは非常に危険な行為です。ローダウン車には「低床」タイプを、作業効率を求めるなら「デュアルポンプ」式を選ぶのが、賢明な選択です。
そして、どんなに高性能な3トンジャッキを準備しても、それだけでは安全は確保できません。ジャッキアップは、「ジャッキスタンド(ウマ)」とセットで初めて完結する作業です。
「ジャッキだけで保持された車両の下には絶対に入らない」
この鉄則を守り、正しいジャッキアップポイントと、正しいジャッキスタンドの設置位置を必ず遵守してください。
安全なDIYライフのために(免責事項)
この記事で紹介したジャッキの選定基準や作業手順は、私個人のDIY愛好家としての経験と、収集した情報に基づいてまとめたものです。できる限り正確な情報を提供するよう努めておりますが、すべての車両・状況での安全性を保証するものではありません。
数値データなどはあくまで一般的な目安として捉え、ご自身の車両の仕様(特に車検証に記載の車両総重量)を必ず確認してください。
実際の作業にあたっては、必ずご使用になるジャッキ、ジャッキスタンド、および車両の取扱説明書を熟読し、その指示に従ってください。
少しでも作業に不安を感じる場合や、ジャッキポイントの特定に自信が持てない場合は、決して無理をせず、ディーラーや専門の整備工場に相談することを強く、強く推奨します。
正しい知識と道具を揃え、安全第一でハイエースのDIYライフを楽しみましょう!


