軽バンの床張りや水回りのDIYで、今もっとも注目を集めている素材といえば「NFボード」です。
コンクリートの型枠や畜舎の壁材として使われてきたこの業務用素材が、なぜこれほどまでに我々DIY愛好家の心を掴んで離さないのでしょうか。
それは、木材のように腐ることがなく、水洗いも可能で、なおかつ適度な強度を持っているという、アウトドアやハードな使用環境にうってつけの特性を持っているからです。
しかし、いざ「自分の車もNFボードで床張りをしよう!」と意気込んで購入計画を立て始めると、多くの人が一つの大きな壁にぶつかります。
ネット上の掲示板やSNS、あるいはブログのコメント欄で頻繁に目にする、「ホームセンターでNFボードのカットを断られた」という悲痛な叫びです。
「えっ、木材売り場でいつもカットしてもらっているあの機械で、ついでに切ってくれないの?」
そう思うのも無理はありません。見た目はただの板ですし、厚みも合板と変わりません。
しかし、実際に店舗へ足を運んでみると、店員さんに申し訳なさそうに、しかしきっぱりと「その素材はカットできません」と断られてしまうケースが後を絶たないのです。
もし、あなたが重いNFボードをカートに載せてレジまで運び、会計を済ませた後にカットコーナーで断られたとしたらどうでしょう。
長さ1800mmもある板を、切らずに軽自動車に積んで帰るのは至難の業です。
場合によっては、泣く泣く返品するか、途方に暮れながら高額な工具をその場で購入することになるかもしれません。
そのような事態を避けるためには、事前に「なぜ断られるのか」「どこの店なら可能性があるのか」、そして「最悪の場合、どうやって自分で持ち帰り、加工すればいいのか」という情報を網羅的に知っておく必要があります。
この記事では、「NFボード加工のノウハウ」を、余すところなくお伝えします。
単なる情報のまとめではなく、これからDIYに挑戦するあなたが、一歩も迷うことなくプロジェクトを完遂できるように、現場レベルの細かいテクニックや注意点まで深掘りして解説していきます。
「カットできないなら諦めようか」と考えるのはまだ早いです。むしろ、この「カットの壁」を乗り越えた先にこそ、既製品にはない、あなただけの完璧なカスタム空間が待っているのですから。
- 主要ホームセンターにおけるNFボードのカット対応状況とその背景
- なぜ店舗の高価なパネルソーで樹脂板を切ることが危険なのかという技術的理由
- 初心者でもプロ並みの仕上がりを実現するための、具体的な工具選びと加工手順
- ネット通販でのオーダーカット活用法や、車種専用キットという選択肢
本記事の内容
NFボードはホームセンターでカット不可?実情と理由
DIYの強い味方であり、我々の創作意欲を支えてくれるホームセンターの木材カットサービス。
ワンカット数十円という格安の料金で、巨大な板材をミリ単位の精度で切り出してくれるこのサービスは、まさに神対応と言っても過言ではありません。
しかし、ことNFボード(および同等の再生プラスチック板)に関しては、その神対応が期待できないのが現実です。
「たかがプラスチックの板でしょう?」と甘く見ていると、痛い目を見ることになります。
ここでは、なぜ通常の木材のように気軽にカットしてもらえないのか、その背景にある店舗側の切実な事情や、各主要チェーンごとの具体的な対応傾向について、表向きのルールだけでなく、現場のリアルな空気感も含めて詳しく見ていきたいと思います。

カインズやコーナンの店舗対応と実態
まず、日本のホームセンター業界を牽引する二大巨頭、「カインズ(CAINZ)」と「コーナン」の対応についてです。
多くのDIYユーザーがまず最初に足を運ぶのが、このどちらかの店舗ではないでしょうか。
結論から申し上げますと、一般的にこれらの店舗ではNFボードの機械カットは断られる可能性が極めて高いと覚悟しておいた方が良いでしょう。
これは決して店員さんが意地悪をしているわけでも、知識がないわけでもありません。
むしろ、マニュアルや安全基準がしっかりと整備されている大手だからこそ、「対応外の素材」に対する線引きが厳格になされているのです。
公式ルールの壁
各社の公式サイトや、店舗のカットコーナーに掲示されている「カットサービス規定」をよく読んでみると、多くの場合「当店でご購入いただいた『木材』に限ります」という文言が見つかります。
あるいは「金属、プラスチック、波板等のカットはお断りしております」と明記されていることも珍しくありません。
NFボードは、JFEプラリソース株式会社などが製造する再生プラスチック(主にポリプロピレンやポリエチレン)の板であり、木材成分を含んでいない純粋な樹脂製品です。
したがって、ルールの定義上、木材カットサービスの対象外となってしまうのです。
(出典:JFEプラリソース株式会社 公式サイト)
「コーナンPRO」ならいけるのか?
ここで一つの疑問が浮かびます。「プロ向けの建材を扱っている『コーナンPRO』なら、職人さんも来るし対応してくれるのではないか?」という期待です。
確かにコーナンPROは、一般店舗よりも幅広い資材を扱い、特殊な要望にも柔軟に対応してくれるイメージがあります。実際、店舗によっては店員さんの裁量や、備え付けられている機械の種類(樹脂対応の刃を付けている場合など)によって、稀に対応してもらえるケースもゼロではありません。
しかし、私がリサーチした限りでは、コーナンPROであっても「パネルソー(大型の壁面切断機)での樹脂カットはNG」としている店舗が圧倒的多数です。理由は後述しますが、機械へのダメージがあまりにも大きいからです。
「切ってもらえたらラッキー」程度の淡い期待で行くのは危険です。「切れない」前提で、どうやって持ち帰るかを考えておく必要があります。
カインズの最強の武器「カインズ工房」
では、カインズでNFボードを買うのは諦めた方がいいのでしょうか? いいえ、実はカインズには他のチェーンにはない強力な武器があります。
それが「カインズ工房(CAINZ DIY Square)」です。
これは店舗に併設されたDIY専用の作業スペースで、購入した材料をその場で加工できる場所です。
店員さんによるカットサービス(加工代行)は断られても、場所と工具をレンタルして「自分で切る」スタイルであれば、NFボードの持ち込み・加工を許可している店舗が多いのです。
工房にはしっかりとした作業台があり、電動丸ノコやジグソーといった電動工具のレンタルも行われています(有料・無料は会員ランクや店舗による)。
自宅に作業スペースがないマンション住まいの方や、工具を持っていない初心者の方にとって、これはまさに救世主のようなサービスです。
ただし、レンタル工具の刃が「木工用」のままであることが多いため、できれば「樹脂用の替刃」だけは自分で購入して持ち込み、付け替えさせてもらうのがベストです(刃の持ち込み可否も事前に確認しましょう)。

DIYスペース活用のヒント
すべてのカインズに工房があるわけではありません。また、工房があっても「樹脂の粉が出る作業は集塵機の関係でNG」とされる場合もあります。
購入前に必ず、最寄りの店舗へ電話し、「NFボード(再生プラスチック板)を購入予定ですが、工房で丸ノコを借りて自分でカットすることは可能ですか?」と具体的に問い合わせてみましょう。
コメリでの販売価格とカットの可否
次に、地方や郊外を中心に展開し、農業従事者や建設業者からの信頼も厚い「コメリ」および「コメリパワー」の状況を見てみましょう。
コメリの特徴は何と言っても、その圧倒的なコストパフォーマンスと、プロ仕様の品揃えにあります。
資材館での遭遇率と価格
コメリの「資材館」では、NFボードそのもの、あるいは同等品の再生樹脂ボードが、非常にリーズナブルな価格で山積みされている光景をよく目にします。
地域や時期にもよりますが、他のホームセンターやネット通販と比較しても、一枚あたりの単価が数百円〜千円近く安い場合もあり、大量に枚数が必要な床張りDIYにおいては、この価格差が最終的な総工費に大きく響いてきます。
「とにかく安く材料を手に入れたい」という方にとって、コメリは最有力候補の一つと言えるでしょう。

カット対応の現状
しかし、残念ながらカットサービスに関しては、コメリもカインズやコーナンと同様、あるいはそれ以上にシビアな傾向があります。
特にコメリは、店舗ごとの設備差が大きく、パネルソーが設置されていない小規模店舗も数多く存在します。大型の「コメリパワー」であっても、木材カットと鋼材カット(高速カッターによる切断)は行っていても、その中間に位置する「樹脂板」は、どちらの機械でも対応できない「グレーゾーンの素材」として扱われがちです。
基本的には「カット対応不可」と考えて間違いありません。
トラック貸出サービスの活用
カットしてもらえないとなると、問題になるのが「配送」です。3x6サイズ(910mm × 1820mm)のNFボードは、軽乗用車にはそのままでは載りません。軽バン(N-VANやエブリイ)であれば助手席を倒せばギリギリ載りますが、運転席が窮屈になります。
そこで活用したいのが、コメリ(および多くのホームセンター)で実施されている「軽トラック貸出サービス」です。60分〜90分程度、無料で資材運搬用のトラックを借りることができます。
「カットできないなら、そのまま家まで運んで、家の庭や駐車場でゆっくり切る」という作戦に切り替えるのです。これなら、店舗で断られて途方に暮れることもありません。
ただし、貸出トラックは人気があり、予約が必要な場合も多いので、事前に空き状況を確認しておくことを強くおすすめします。

カットするデメリットと断られる理由
ここまで「断られる」という事実ばかりをお伝えしてきましたが、読者の皆様の中には「どうして? お金を払うって言ってるのに」と納得できない方もいらっしゃるかもしれません。
なぜ、これほどまでにNFボードのカットは敬遠されてしまうのでしょうか。
その理由は、単なる「面倒だから」や「意地悪」といった感情的なものではなく、物理学と機械工学に基づいた、極めて合理的なリスク管理の結果なのです。
私たちが普段何気なく利用している木工用のパネルソーにとって、プラスチック素材は、実は「刃を殺し、機械を詰まらせる」天敵とも言える存在です。
店舗側がカットを拒否せざるを得ない3つの重大リスク
| リスク要因 | 具体的なメカニズムと影響 |
|---|---|
| 1. 摩擦熱による 融解と刃の固着 | 木工用の丸ノコは高速回転(毎分数千回転)します。 木材は摩擦熱で「焦げる」だけですが、 熱可塑性樹脂であるNFボードは一瞬で「溶け」ます。 溶けたプラスチックは飴状になって 刃のチップ(超硬金属)に絡みつき、冷えるとカチカチに固まります。 これを「溶着」と呼びます。 一度溶着した刃は切れ味が著しく低下し、 クリーニングや再研磨が必要になります。 一枚数百円のカット代で、数千円〜数万円の刃をダメにするリスクは、 店舗として負えないのです。 |
| 2. 集塵システムの 閉塞・故障 | パネルソーには強力な集塵機が直結されています。 木のおがくずはサラサラしていますが、 プラスチックの切削屑は静電気を帯びやすく、 綿やリボンのように絡まり合う性質があります。 これが集塵ダクトやフィルターの内部で詰まりを起こすと、 モーターに負荷がかかって故障したり、 最悪の場合は発火の原因になったりする恐れがあります。 機械全体のメンテナンスコストを考えると、 樹脂カットは割に合わないのです。 |
| 3. キックバックによる 労働災害 | これが最も恐ろしい理由です。 切断中に溶けた樹脂が、刃の側面と材料の間に挟まり込み、 ブレーキのような抵抗を生みます。 すると、高速回転する刃の力が材料を弾き飛ばす 「キックバック」という現象が発生します。 硬くて重いNFボードが作業員に向かって飛んでくれば、 大怪我に繋がります。従業員の安全を守るためにも、 不安定な樹脂カットは断らざるを得ないのです。 |
このように、店舗側には「断る正当な理由」があります。これを理解していれば、もし店頭で断られても、食い下がって店員さんを困らせるようなことはなくなるはずです。
「そうか、機械を壊すかもしれないから無理なんだな」と割り切り、次の手段(自己加工や通販)に頭を切り替えることが、スマートなDIYerへの第一歩です。

ネット通販のオーダーカットを活用
「近所に工房を貸してくれるホームセンターがない」「自分で切る場所も道具もない」「でも、どうしてもきれいにカットされたNFボードが欲しい」
そんな八方塞がりの状況を打破する唯一の解決策が、ネット通販を利用した「オーダーカット」です。
通販で購入するメリット
楽天市場やYahoo!ショッピングに出店している「合板専門店」や「建材プロショップ」の中には、NFボードを取り扱っているだけでなく、オプションで指定サイズへのカットを受け付けているお店が存在します。
これらのお店の強みは、木工用だけでなく、樹脂やアルミ複合板なども切断できる「NCルーター」や「ランニングソー」といった、より高度な産業用加工機を保有している点です。
ホームセンターのパネルソーとは次元の違う設備で切断されるため、断面は驚くほど滑らかで、寸法精度もミリ単位で正確です。
「届いたら置くだけ」の状態まで加工してもらえるというのは、時間と手間を大幅に節約できる最大のメリットです。

コストと注意点
一方で、デメリットはやはり「コスト」です。
NFボード自体の価格に加え、以下の費用が発生します。
- 大型配送送料:
3x6サイズの板は「長尺物」扱いとなり、個人宅への配送は高額(数千円〜)になるか、あるいは「西濃運輸の支店止め」になるケースが多いです。 - カット加工賃:
1カットあたり数百円、あるいは「一律◯◯円」といった加工費が加算されます。複雑な図面の場合は見積もりが必要になることもあります。
ホームセンターで買って自分で切る場合に比べて、総額で倍以上の金額になることも珍しくありません。
しかし、高価な電動工具を買い揃える初期投資や、失敗して材料を無駄にするリスク、そして作業にかかる時間と労力を天秤にかければ、決して高い投資ではないとも言えます。
特に、単純な長方形のカットだけで済む場合(例えば、荷台のフラットな部分だけに敷きたい場合など)は、通販のオーダーカットは非常に賢い選択肢です。
車中泊の床張りDIYでの課題
さて、ここからはより具体的な実践編の話に入りましょう。
NFボードを購入する目的として圧倒的に多いのが、軽バン(N-VAN、エブリイ、ハイゼットカーゴなど)やハイエースの「車中泊仕様への床張り」です。
YouTubeやInstagramで、まるで部屋のように美しく改装された車内を見て、「自分もやってみたい!」と夢を膨らませている方も多いでしょう。
しかし、この「車の床張り」こそが、ホームセンターのカットサービスでは対応しきれない、DIYの最難関ポイントを含んでいるのです。
その理由は、車の荷室が決して「四角い箱」ではないからです。
複雑怪奇な形状との戦い
車の荷室の床をよく観察してみてください。
後輪部分が大きく室内に出っ張っている「タイヤハウス」、シートベルトを固定するためのボルト穴、リアハッチのロック機構の逃げ、配線を通すための切り欠き……。
そこには、無数の曲線と凹凸が存在します。
これらの形状を避けて、隙間なくピッタリと床板を敷き詰めるためには、単純な直線カットだけでは到底不可能です。
曲線(R加工)や、コの字型の切り欠き加工が必須となります。

現場合わせの重要性
さらに厄介なのが、同じ車種でも年式やグレードによって微妙に形状が異なる場合があることです。
ネットで拾った図面通りに切っても、実際に車に合わせてみると「あと5ミリ当たって入らない!」といった事態が頻発します。
結局のところ、自分の車の現物に板を当てがい、少しずつ削って調整する「現場合わせ」の作業が不可欠になります。
つまり、本格的な車中泊の床張りを安価に、かつ美しく実現しようとするならば、最終的には「自分で切る技術」を身につけるのが一番の近道であり、避けては通れない道と言えるのです。
最初はハードルが高く感じるかもしれませんが、適切な道具さえあれば、初心者でもきれいな仕上がりを目指すことは十分に可能です。
次章では、その具体的な方法を伝授します。
NFボードをホームセンターでカットできない時の加工法
店舗で切ってもらえないなら、自分でやるしかありません。
「でも、電動工具なんて触ったこともないし…」と尻込みする必要はありません。
ここからは、私がリサーチし、実際に試行錯誤しながら学んだ「失敗しないための自己加工メソッド」をご紹介します。
NFボードは木材とは性質が全く異なるため、道具選びを間違えると大変なことになりますが、逆に言えば「正しい道具」さえ選べば、木材よりも素直で加工しやすい素材でもあります。

自分で切断する加工方法と推奨工具
NFボードを自分で加工する際、最も重要なキーワードは「熱対策」です。
先ほどのリスク説明でも触れましたが、NFボードの原料であるポリプロピレン(PP)等の樹脂は、摩擦熱で簡単に溶けてしまいます。
この「溶け」との戦いを制することが、DIY成功の鍵を握っています。
手工具 vs 電動工具
まず、道具の選択です。
「電動工具は怖いから、手ノコギリで切りたい」という方もいるかもしれません。
確かに、プラスチック用の手ノコ(レザーソーなど)を使えば切れないことはありません。しかし、厚さ12mmのNFボードを、床一面分切るのは想像を絶する重労働です。
また、手で切るとどうしても断面が垂直にならず、斜めになってしまいがちです。継ぎ目がピタリと合わなくなる原因になります。
効率、精度、そして体力を温存するためにも、ここは覚悟を決めて電動工具を導入することを強くおすすめします。

これだけあれば勝てる! 必須の2大ツール
床張りDIYを完遂するためには、以下の2つの道具を使い分けるのがベストな布陣です。
NFボード加工の神器
- 電動丸ノコ(14.4V〜18V推奨):
長い直線を、定規に沿ってスパッと真っ直ぐ切るために必須です。
手ノコでは不可能な美しい直線が得られます。充電式(コードレス)が取り回しやすくおすすめですが、AC電源式(コードあり)の方が安価でパワーも安定しています。 - ジグソー:
タイヤハウスのアーチ形状や、細かい切り欠きを作るのに最適です。
ミシンのように刃が上下して切る道具で、丸ノコよりも安全性が高く、恐怖心も少ないため初心者にも扱いやすい工具です。
ただし、ここで最も重要な注意点があります。
これらの工具を買った時に「最初からついている刃」をそのまま使ってはいけません。
ここが最大の落とし穴であり、多くの人が「NFボードは切りにくい」と誤解してしまう原因です。
丸ノコには樹脂用チップソーを使用
多くの丸ノコには、標準で「木工用」のチップソー(刃)が付属しています。
木工用の刃は、一般的に刃の数(P数)が24〜40程度と少なく、木目の繊維を断ち切るために刃の角度が鋭くなっています。
これで硬い樹脂であるNFボードを切ろうとすると、以下のような悲劇が起きます。
- 一刃あたりの切削量が多すぎて衝撃が大きく、材料がバタつく。
- 摩擦熱が高くなりやすく、切断面がドロドロに溶ける。
- 溶けた樹脂が再硬化して、切り口が塞がってしまう(リウェルディング現象)。
- 激しい「バリ」が発生し、後処理が大変になる。
救世主「樹脂用チップソー」
きれいに切断するためには、必ず「窯業・樹脂用」や「プラスチック用」と明記されたチップソーに交換してください。
具体的には、刃の数(P数)が50以上(例:52P、56Pなど)あるような、刃が細かくて密度の高いタイプです。
例えば、マキタの「A-67418」や、各メーカーから出ている「塩ビ・プラスチック用」を使うだけで、世界が変わります。
刃数が多いことで衝撃が分散され、まるでバターを温めたナイフで切るかのように、「スーーッ」と滑らかに進んでいきます。溶けもバリも最小限に抑えられます。
切断のコツ:速度管理
良い刃を使っても、切り方を間違えれば溶けます。
コツは、「迷わず、一定の速度で進める」ことです。
慎重になりすぎてゆっくり進めると、同じ場所に刃が留まる時間が長くなり、摩擦熱で溶け出します。
逆に速すぎると、刃が材料に食い込んで止まってしまったり、キックバックの原因になります。
「溶ける匂い」がしたら少し速度を上げる、あるいは一度刃を材料から離して空転させ、風を当てて冷却する、といったテクニックが有効です。
本番の前に、端材を使ってこの「最適な速度」を体感しておくことが、失敗を防ぐ最大の防御策です。
曲線カットにはジグソーが最適
車の床の形に合わせるための曲線カットには、小回りの効くジグソーが欠かせません。
丸ノコは直線しか切れないため、タイヤハウスのR(カーブ)を切ろうとすると刃が挟まって非常に危険です。絶対にやってはいけません。
曲線はジグソー、直線は丸ノコ。この役割分担が鉄則です。
ブレード選びとセッティング
ジグソーの場合も、やはりブレード(替刃)選びが重要です。
ホームセンターのジグソー替刃売り場に行くと、「木工用」「鉄工用」「プラスチック用」などが並んでいます。
迷わず「プラスチック用」を選んでください(例:マキタ B-25など)。
もしプラスチック用がなければ、「鉄工用(金工用)」でも代用可能です。刃のピッチが細かいものが適しています。
逆に「木工用荒切り」のような刃の粗いものは、材料が暴れて割れる原因になるのでNGです。
オービタル機構はOFFに!
最近のジグソーには「オービタル機構」という機能がついていることが多いです。
これは刃を前後にしゃくりながら動かすことで、厚い木材をザクザク切るための機能ですが、NFボードを切る時は、必ずこのオービタル機構を「OFF(0)」にしてください。
オービタルを入れたまま硬い樹脂を切ると、激しい振動と共に材料が欠けたり、断面がガタガタになったりします。
「オービタルなし」で、ゆっくりと丁寧にラインをトレースしていくのが、きれいな曲線を作るコツです。

冷却しながら切る
ジグソーは刃のストローク運動で切るため、丸ノコ以上に熱がこもりやすい傾向があります。
長い距離を切っていると、摩擦熱で刃の周りの樹脂が溶け、再び固まって刃が動かなくなることがあります。
これを防ぐには、エアダスター(パソコン掃除用のものでOK)を片手に持ち、切り口に風を当てて切り屑を吹き飛ばしながら切る方法が非常に有効です。
空冷効果で溶けを防ぎつつ、墨線(カットライン)も見やすくなり、一石二鳥です。
難接着素材NFボードの接着テクニック
無事にカットが終わっても、まだ安心はできません。
次に待っているのが「接着・固定」という難関です。
「板を切ったから、あとはボンドで貼ればいいや」と思っているなら、その考えは一度捨ててください。
NFボードの素材であるポリプロピレン(PP)は、接着剤業界では「難接着素材」として悪名高い存在です。
表面のエネルギーが非常に低く、水がハスの葉の上で弾かれるように、接着剤も弾いてしまうのです。
普通の木工用ボンドはもちろん、強力な瞬間接着剤やエポキシ系接着剤でさえ、乾いた後に爪で引っ掛けると「ペリッ」と簡単に剥がれてしまいます。
この強敵を攻略するには、以下の3つの専門的なアプローチが必要です。

特に車中泊仕様の場合、メンテナンス(スペアタイヤの取り出しや、車検時の取り外し)を考慮して、完全に接着してしまうのではなく、「裏面にPP対応両面テープでマジックテープを貼り、車体のカーペットに固定する」という方法が、ズレ防止とメンテナンス性を両立できるベストプラクティスとして多くのDIYerに採用されています。
失敗しないバリ取りと仕上げのコツ
カットと固定計画ができれば、ゴールは目前です。
最後に行うのが「バリ取り」と「仕上げ」です。
樹脂を切断すると、切り口に溶けた樹脂が糸を引いたり、鋭利な「バリ(返り)」となって残ったりします。
これをそのままにしておくと、作業中に指をスパッと切ってしまったり、車内の内装を傷つけたり、あるいは寝袋やマットを破いてしまう原因になります。
「切って終わり」ではなく、「触っても痛くない状態にする」までが加工です。
バリ取りの道具
バリ取りには、専用の「バリ取りバー(くるくる回る刃がついた工具)」があれば一番早いですが、わざわざ買わなくても身近なもので代用できます。
カッターナイフの刃の背中(切れない側)を、切り口の角に当てて「シュッ」と滑らせるように削ぎ落とす方法が簡単できれいです。
スクレーパー(金属のヘラ)も有効です。
面取りでプロの仕上がりに
さらにクオリティを上げたいなら、サンドペーパー(紙やすり)の#120〜#240程度を木片に巻き付け、切断面の角を軽く削って「面取り」をしてあげましょう。
角が丸くなることで手触りが優しくなり、見た目の高級感もグッと上がります。
もしトリマーという電動工具を持っていれば、「ボーズ面ビット」を使って角をきれいにR加工すると、まるでメーカー純正品のような仕上がりになります。

切り口の白化対策
プラスチックは、切ったり曲げたりしてストレスがかかると、その部分が白く変色する「白化」という現象が起きます。
NFボードの切り口(特に黒やグレーの場合)が白っぽくなって気になる場合は、ヒートガン(工業用ドライヤー)やガストーチで、遠くからサッと一瞬だけ熱風を当ててあげるという裏技があります。
表面がほんの少しだけ溶けることで、艶が戻り、白化が消えます。
ただし、やりすぎるとデロデロに溶けて変形してしまう諸刃の剣ですので、必ず端材で練習してから、自己責任で行ってください。
NFボードのホームセンターでのカット問題総括
長くなりましたが、NFボードのカットに関しては、ホームセンターでの対応は期待薄であるというのが現状の結論です。
しかし、それはNFボードが「使えない素材」ということでは決してありません。
むしろ、その加工の難しさ(というよりは、特性の違い)さえ理解してしまえば、水に強く、腐らず、汚れを弾き、一生モノの耐久性を持つという、木材には絶対に真似できない圧倒的なメリットを享受できるのです。
「店で切ってもらえないなら、自分で切ればいい」
この発想の転換こそが、あなたのDIYスキルを一段階引き上げるきっかけになります。
適切なチップソー(例えばマキタA-67418など)を選び、熱対策を行い、正しい接着方法を知る。
この記事で紹介した知識があれば、あなたはもう「カット難民」ではありません。
プロに頼らずとも、自分だけの理想的なカスタム空間を、自分の手で作り出すことができるのです。
最初は少しハードルが高く感じるかもしれませんが、ぜひこの機会に「NFボードの自己加工」に挑戦してみてください。
苦労して切り出した床板が、愛車の荷室にピタリとハマった瞬間の快感は、何物にも代えがたいDIYの醍醐味です。
さあ、準備を整えて、最高の床作りを始めましょう!


