pp溶接をハンダゴテで行いたいけれど、具体的なやり方や溶着方法、そしてどれくらいの強度が得られるのか、不安に感じていませんか。
実際に作業を始める前には、プラスチックをはんだごてで溶かすとどのくらいの温度になるのか、また半田ごてでの作業がプラスチックにとって有害ではないかといった疑問が浮かぶかもしれません。
この記事では、プラスチックのはんだごての基本的な使い方から、はんだごてでプラスチックを切る、あるいは接着する方法まで、初心者の方にも分かりやすく解説します。
さらに、プラスチック溶接とヒートガンやグルーガンとの違い、プラスチック溶接棒の代用は可能なのか、100均の道具は使えるのか、そして作業に最適なプラスチック溶接用のコテ先コテの選び方にも触れていきます。
そもそもハンダ付けと溶接の違いは何ですか?という根本的な問いにもお答えし、失敗することなく作業を進められるよう、必要な情報をお届けします。
- pp溶接とハンダ付けの基本的な違い
- ハンダゴテを使った具体的なpp溶接の手順
- 溶接の強度を高めるコツと注意点
- 代用品や100均アイテムの活用可能性

本記事の内容
pp溶接をハンダゴテで行うための基本知識
- ハンダ付けと溶接の違いは何ですか?
- プラスチックのはんだごての使い方は?
- pp溶接のやり方と基本的な溶着方法
- はんだごてでプラスチックを切る・接着する
- プラスチックを溶かすとはんだごての温度は何度?
- 半田ごてでのプラスチック作業は有害か?
ハンダ付けと溶接の違いは何ですか?

「ハンダ付け」と「溶接」は、物を接合するという点では同じですが、その原理は根本的に異なります。
これらの違いを理解することが、適切な作業を行うための第一歩となります。
ハンダ付けは、接合したい母材(金属など)よりも融点の低い「はんだ」という合金を溶かし、接着剤のように用いて部材間を接合する技術です。
このとき、母材自体は溶けていません。
一方、プラスチック溶接は、接合したい母材(この場合はプラスチック)そのものを熱で溶かし、母材同士を融合させて一体化させる技術です。
場合によっては、母材と同じ材質の「溶接棒」を一緒に溶かし込んで、接合部を補強することもあります。
要するに、母材を溶かすか溶かさないかが、両者の最も大きな違いと言えます。
ハンダゴテをプラスチック溶接に使う場合、本来のハンダ付けとは異なり、ハンダゴテを「プラスチックを溶かすための熱源」として利用しているのです。
プラスチックのはんだごての使い方は?

プラスチック溶接では、はんだごてを「はんだ」を溶かすためではなく、プラスチック自体を直接加熱し、溶かすための道具として使用します。
基本的な使い方は、温めたコテ先を修理したいプラスチックの割れ目や接合部分に直接当てることです。
コテ先の熱によってプラスチックが溶け始めたら、割れ目の両側をゆっくりと溶かし合わせるようにコテ先を動かします。
このとき、ただ表面をなでるのではなく、ある程度深さまで熱が伝わり、両者がしっかりと融合するように意識することが大切です。
もし強度を高めたい場合や、欠けた部分を補修したい場合は、母材と同じ材質の溶接棒(または代用品)をコテ先で溶かしながら、接合部に盛り付けていきます。
このように、はんだごてはプラスチックを溶融させるための「熱ペン」のような役割を果たします。
温度調節機能付きのはんだごてであれば、プラスチックの種類に合わせて適切な温度に設定することで、焦げ付きや変形を防ぎやすくなります。
pp溶接のやり方と基本的な溶着方法

ポリプロピレン(PP)をはんだごてで溶接する際の基本的な手順は、いくつかのステップに分けられます。
この手順を丁寧に行うことで、より確実な溶着が期待できます。
手順1:表面処理
まず、溶接する部分の汚れ、油分、水分をきれいに拭き取ります。
アルコールなどで脱脂すると、より効果的です。
表面が汚れていると、溶着不良の原因となるため、この下準備は仕上がりを左右する重要な工程です。
手順2:加熱と加圧
はんだごてを十分に加熱し、コテ先をPPの接合部に当てて溶かしていきます。
両方の部材が均等に溶けるように注意深く熱を加えます。
部材が十分に溶けたら、両者を密着させるように圧力を加えます。
この加圧によって、溶けた樹脂同士が分子レベルで絡み合い、一体化が進みます。
手順3:拡散または溶接
必要に応じて、PP製の溶接棒を溶かしながら接合部に材料を足していきます。
これにより、接合部の肉厚を増し、強度を高めることが可能です。
手順4:冷却
溶接部が完全に冷えて固まるまで、動かさずに保持します。
急激に冷やすと内部に応力が生じ、強度が低下する可能性があるため、自然に冷ますのが理想的です。
この一連の流れが、基本的な溶着方法となります。
焦らず、各工程を確実に行うことが成功の鍵です。
はんだごてでプラスチックを切る・接着する

はんだごては、プラスチックを溶接(接着)するだけでなく、切断する道具としても活用できます。
これは、市販されている「ホットナイフ」や「ヒートカッター」と同じ原理です。
熱したコテ先をプラスチックに当てることで、溶かしながらスムーズに切り進めることが可能です。
カッターナイフでは難しい曲線的なカットや、厚みのある板の切断に役立ちます。
ただし、切断面は溶けたプラスチックで多少荒れるため、後からヤスリなどで仕上げる作業が必要になる場合があります。
一方、接着に関しては、前述の通り、母材同士を溶かして直接つなぎ合わせる方法が基本です。
これは、溶剤系の接着剤のように表面を溶かして化学的に結合させるのとは異なり、物理的に一体化させる方法です。
割れた部品の断面を両側から均等に溶かし、ぴったりと合わせることで、元の形に修復できます。
より強固な接着が必要な場合は、同じ素材のプラスチック片(溶接棒)を「はんだ」のように溶かし込み、隙間を埋めたり肉盛りをしたりすることで、接着強度を高めることが可能です。
プラスチックを溶かすとはんだごての温度は何度?

プラスチックの種類によって融解する温度(融点)は異なります。
そのため、はんだごての温度設定が作業の成否を分けることがあります。
一般的なはんだごては、電子工作用で300℃~400℃程度の温度に達するため、ほとんどの熱可塑性プラスチックを溶かすには十分な熱量を持っています。
以下は、主なプラスチックの融点の目安です。
プラスチックの種類 | 記号 | 融点(℃)の目安 |
---|---|---|
ポリプロピレン | PP | 160~170 |
ポリエチレン(高密度) | HDPE | 130~140 |
ポリエチレン(低密度) | LDPE | 105~115 |
ABS樹脂 | ABS | 100~110(軟化温度) |
ポリ塩化ビニル | PVC | 80~210 |
ポリスチレン | PS | 約100(軟化温度) |
表を見ると、例えばPP(ポリプロピレン)の融点は約160℃~170℃です。
はんだごての温度はこれを大きく上回るため、簡単に溶かすことができます。
しかし、温度が高すぎるとプラスチックが焦げてしまったり、煙が多く発生したり、意図しない部分まで変形させてしまったりする恐れがあります。
理想は、温度調節機能付きのはんだごてを使用し、対象のプラスチックがゆっくりと溶ける程度の温度(例えば200℃~250℃)に設定して作業することです。
これにより、作業のコントロールがしやすくなり、きれいな仕上がりが期待できます。
半田ごてでのプラスチック作業は有害か?

はんだごてでプラスチックを加熱する際には、発生する煙やガスに注意が必要です。
プラスチックの種類によっては、有害な物質が含まれている可能性があるため、安全対策は不可欠と考えられます。
最も注意すべきは、PVC(ポリ塩化ビニル)です。
PVCを加熱すると、有毒で腐食性の高い塩素ガスが発生する危険性があります。
これを吸い込むと健康を害する恐れがあるため、屋内で作業する場合は絶対に避け、屋外であっても十分な注意が求められます。
PP(ポリプロピレン)やPE(ポリエチレン)は、炭素と水素のみで構成されているため、完全燃焼すれば二酸化炭素と水になりますが、はんだごてによる不完全な加熱では、特有の臭いを持つガスが発生します。
これらが直ちに深刻な健康被害をもたらす可能性は低いとされていますが、高濃度で長時間吸い続けることは推奨されません。
どのようなプラスチックを扱う場合であっても、作業中は必ず十分な換気を行うことが大切です。
窓を開けたり、換気扇を回したりするだけでなく、可能であれば防毒マスクを着用すると、より安全に作業を進めることができます。
pp溶接をハンダゴテで実践するときのコツ
- プラスチックを溶接した場合の強度
- 溶接棒で代用できるのか
- 100均の道具は使える?
- プラスチック溶接に適したコテ先やコテ
- ヒートガンとグルーガン
- pp溶接とハンダゴテ活用のポイントまとめ
プラスチックを溶接した場合の強度

はんだごてでプラスチックを溶接した場合の強度は、その方法に大きく左右されます。
単純に割れた面同士を溶かして付けただけでは、特に力がかかる部分の場合、十分な強度が得られずに再び破損してしまうことがあります。
強度を格段に向上させるための効果的な方法として、金属などの補強材をプラスチックに埋め込む技術があります。
これは「フランケン溶接」などとも呼ばれる手法です。
補強材を埋め込む方法
具体的な例として、ステンレス製の針金やホッチキスの芯(ステープル)を溶接部分に配置し、その上からはんだごてで熱を加えてプラスチックの中に埋め込んでいきます。
金属が骨の役割を果たし、プラスチックだけの場合と比較して、ねじれや衝撃に対する抵抗力が飛躍的に高まります。
車のバンパー修理などに使われる専用のプラスチック溶接機(ヒートリペアキット)も、この原理を応用したものです。
この方法を使えば、見た目は傷跡のようになりますが、実用上は十分な強度を確保できるケースが多くなります。
接着剤では難しい、力が加わる箇所の修理において非常に有効な手段と言えるでしょう。
溶接棒で代用できるのか

プラスチック溶接を行う際、欠損部を埋めたり強度を高めたりするために「溶接棒」が使われます。
原則として、溶接棒は修理する母材と全く同じ材質のものを使用するのが理想です。
材質が異なると、うまく溶け合わずに接着不良を起こしたり、接合部の強度が著しく低下したりする原因になります。
しかし、専用の溶接棒が手に入らない場合、身の回りにあるもので代用が試みられることがあります。
例えば、PP(ポリプロピレン)製品の修理であれば、不要になったPP製の結束バンドや、プラモデルのPP製ランナー(枠の部分)などを細かく切って溶接棒の代わりに使うといった例が見られます。
ABS樹脂の修理であれば、ABS製の部品の不要部分を使うなど、素材を合わせることが鍵となります。
ただし、これらはあくまで応急処置的な方法です。
同じPPやABSと表記されていても、添加物などの違いで相性が悪い場合もあります。
そのため、代用品を使う際は、まず目立たない場所で試してみて、うまく溶け合うかを確認することをお勧めします。
重要な部品の修理には、メーカーが指定する純正の溶接棒を使用するのが最も確実です。
100均の道具は使える?

「100円ショップで販売されているはんだごてでプラスチック溶接はできるのか」
という疑問を持つ方もいるかもしれません。
原理的には、プラスチックを融点以上に加熱できれば溶接は可能です。
100円ショップのはんだごてでも、20W~30W程度の出力があれば、PPやPEなどのプラスチックを溶かすだけの熱量を発生させることはできます。
しかし、安価なはんだごてにはいくつかの注意点があります。
まず、多くの場合、温度調節機能がありません。
そのため、温度が高くなりすぎてプラスチックを焦がしてしまったり、逆に熱量が足りずにうまく溶けなかったりと、温度管理が非常に難しくなります。
また、コテ先の形状も電子工作用の細いものがほとんどで、プラスチックを面で押さえて溶かすような作業には向いていない場合があります。
小規模な修理や、試しに一度やってみたいというレベルであれば選択肢になり得ますが、本格的な作業や確実な仕上がりを求めるのであれば、やはり温度調節機能が付いたものや、プラスチック溶接に適したコテ先が付属する専用品を選ぶ方が賢明でしょう。
プラスチック溶接に適したコテ先やコテ

プラスチック溶接の作業効率や仕上がりは、使用するはんだごてのコテ先(チップ)によって大きく変わります。
通常の電子工作用のような先端が尖ったコテ先でも作業は可能ですが、より適した形状のものを使うことで、格段に作業がしやすくなります。
一般的に、プラスチック溶接には、先端が平らで面積の広いコテ先が向いています。
ヘラ状や円盤状のコテ先は、溶かしたプラスチックを平らにならしたり、広い範囲を均一に加熱・加圧したりするのに便利です。
これにより、溶接部を滑らかに仕上げやすくなります。
市販されているプラスチック溶接キットには、こうした「プラスチック溶接用チップ」や「盛り用ヘラチップ」といった専用のコテ先が付属していることが多いです。
また、DIYでコテ先を自作する例もあります。
例えば、頭の大きな釘(シージングネイルなど)を加工して、はんだごてのヒーター部分に取り付けることで、安価に円盤状のコテ先を作ることも可能です。
どのようなコテ先を選ぶにせよ、熱を効率的に伝え、溶かしたプラスチックをコントロールしやすい形状のものを選ぶことが、きれいで強固な溶接を行うためのポイントになります。
ヒートガンとグルーガン

プラスチックの加工や補修には、はんだごての他に「ヒートガン」や「グルーガン(ホットボンド)」といった道具も使われますが、それぞれの用途と原理は全く異なります。
ヒートガンは、ドライヤーのようですが、より高温(数百℃)の熱風を吹き出す道具です。
広範囲を均一に加熱するのに適しており、プラスチックを軟化させて曲げたり、熱収縮チューブを収縮させたりする作業に使われます。
ピンポイントで溶かす「溶接」には不向きで、意図しない部分まで変形させてしまう可能性があります。
一方、グルーガンは、スティック状の樹脂(グルースティック)を熱で溶かし、接着剤として射出する道具です。
これは「接着」であり、母材自体を溶かす「溶接」ではありません。
グルーは比較的低温で溶けるため手軽に使えますが、接合強度は溶接に比べて格段に低く、熱や衝撃で簡単に剥がれてしまいます。
したがって、部材そのものを一体化させて強度を確保したい場合は「はんだごてによる溶接」、広範囲を曲げ加工したい場合は「ヒートガン」、手軽に仮止めや簡易的な接着をしたい場合は「グルーガン」と、目的に応じて道具を使い分けることが大切です。
pp溶接とハンダゴテ活用のポイントまとめ
この記事で解説した、pp溶接をはんだごてで行う際のポイントを以下にまとめます。
- はんだごてはプラスチックを溶かす熱源として利用する
- 溶接は母材を溶かすが、ハンダ付けは母材を溶かさない
- PPの融点は約160℃~170℃ではんだごてで十分溶かせる
- pp溶接の基本手順は、表面処理、加熱、加圧、冷却
- 作業時は十分な換気を行い、有害ガスの発生に注意する
- 特にPVC(ポリ塩化ビニル)の加熱は有毒ガス発生のリスクが高い
- ただ溶かすだけでは強度が不足することがある
- 強度が必要な場合は金属片(ステープルなど)の埋め込みが有効
- この補強方法は「フランケン溶接」とも呼ばれる
- 溶接棒は修理対象と同じ素材のプラスチックを使うのが原則
- 結束バンドなどでの代用は強度低下や接着不良のリスクを伴う
- 100均のはんだごては温度管理が難しく、上級者向け
- 平らで面積の広いコテ先がプラスチック溶接には適している
- ヒートガンは広範囲の加熱、グルーガンは簡易接着が目的
- 用途に応じて、はんだごて、ヒートガン、グルーガンを使い分ける